Arco Iris Ⅳ (ページ35)

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・※ ページ35

「……でも、天野さんからのメッセージ…の、ホンマモンの意味はこれで分かったやろ？」

「うっ……わ、分かってる……私が勝手に決めた食事会は……それはそれ、これはこれ、やもんね…」

「何べんでも言うけど、荒川がホンマに天野さん大好きなんは伝わったから。かなり猪突猛進やけど」

「私だけちゃうよ。はるちゃんも蜜柑ちゃんも、そんで古城も、Aちゃん大好きやろ？」

屈託のない笑顔を浮かべる荒川ちゃんに、私や蜜柑ちゃんは大きく頷く。
噂の内容は笑えんけど、そんな噂なんか何処へと感じる程、Aちゃんはホンマに優しくてええ子や。

具合の悪い人には手を差し伸べるだけでなく、水や薬…貧血やツキモノの人達には毛布やカイロを与えたり…

皆にお菓子や飲み物等の差し入れをこっそりテーブルに置いたり
「皆が使用するから」「少しでも空気が良くなれば」と楽屋を掃除してくれたり…

一線引く子やけど、それでも彼女なりに皆と打ち解けようとしていたんや。

まぁ…中にはそんなAちゃんやからと、雑用を押し付ける人達もそれなりにおるけど、いつも彼女は嫌がらずに引き受けてくれた。
その時の私は、てっきり「自分達の仕事は自分達でやりなさい」と、Aちゃんの中にある正義感の強さで反論するかと思って驚いてもうた。

私は「全部引き受けんでもええ」と諭すも、Aちゃんは「私が好きでやってますので」と笑顔で答える。

どうしたものかと悩む私に、後でしゅんちゃんがこっそり私に教えてくれたんや。

―――その押し付けられる人が、はるや荒川…早乙女ちゃんや他の芸人やったら、天野ちゃんは黙ってられんと思う。目の前で他人が嫌な思いしてまうんが分かると、余計にな。

―――そう…なんか。

―――京極やくるま達も言うてたけど…天野ちゃん、自分が損する分にはあんま何とも思わん素振りなんが、先輩としてちょっとなぁ…

―――……自分が犠牲になっても構わんって感じ？

―――そうやろな…あの子、ホンマによう分からん。でも……気になってまうし、放っとけへん。

謎に満ちた人は、大半は周りから苦手のレッテルを貼られがちや思う。
でも…

―――私、神保町の漫才劇場に…ここではるさんや荒川さん…皆に出会えて、毎日が楽しいです。だからこそ何でもしたくなる…やりたくなる？のかもしれません。

あの子は、体調が良くなり次第神保町の漫才劇場に戻って来る。

Aちゃんや私達の居場所…皆で守らんと。