Arco Iris Ⅳ (ページ25)

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居場所にしたいページ25

〈side A〉

“自分の居場所は、自分で作るものなんだよ”

昔から良く言われる、良く聞かされる言葉の1つだ。

居場所とは何なのか、想像してもそれは漠然としたもので、良く分からない。

私の場合、家では兄さんから「天野家にお前の居場所なんかある訳ねぇじゃん」と嗤われたから、実家に戻る気も無ければ呼び出されても出向く必要なんかない。

学校は、そもそも卒業してしまえばそこでサヨナラな訳だから、居場所も何もないだろう。
勿論この世界のどこかでは、学校の方が安全地帯と思う人達は大勢いる。
しかし私の場合は、兄さんの関係者が多過ぎた故に、周りからの目線が痛くて仕方なくて……学校という閉鎖空間内で、逃げ場所を良く探したものだ。

そして芸人になって、漸く居場所を…それなりのポジションを得られそうになった矢先に……私は、また居場所を失くしてしまった。

居場所とは、当然ながら人が多かれ少なかれ集まる場所。
その場所で、自身が安心して心を休む事が出来て…尚且つ、盛大に様々な分野で活躍出来る空間である……と、何かの辞書で見た気がする。

「……こんなものかな」

新しい住まいは、これまでの住処と違って、心の底から気持ちが落ち着ける場所だ。

もう近くに私の存在を否定する人達はいない。
外から私を妨害して脅迫してくる人達はいない。

……それだけで、今のこの環境は楽園だ。
うっかり寝過ぎてしまうのが玉に瑕だが…

同居人の野宮さんと交わしたのは、家賃や生活費云々は、暫くの間野宮さんと早乙女さんが負担する代わりに……家事全般、私が担当するというものだ。

私はそれを快く了承した。
住まわせて貰ってる立場なのだから、何かしらの役割は必要です。

それに家事全般は得意中の得意分野…と、自画自賛します。

実家では1人で色々とやらされた…やらざる負えなかった環境だったのだけれど、それにより身に付いたスキルがここで役立つとは。

…もう怯える必要もないのだから、何でもやってみせます。

…まぁ、それ以上に「やらねばならない」という気持ちが勝っています。というのも…

「まさか、実はそこそこ汚部屋だったなんて…」

仕方のない事です。
1人は、モノマネ・声優・女優等こなす超絶美女なお笑い芸人。
もう1人は、東京進出してから徐々にブレイクしている最中の男女コンビの片割れ。

…家に帰れる頻度が少ない、つまり家の中がとんでもない状況に陥る事が多々ある…らしいのです。