鎮静 ページ24
「チッ…どいつもこいつも……」
南雲は悪態を吐き、何やらぶつぶつ気味悪く言いながら部屋から出る。多分下で揉めてはる南雲の元カノ集団止めにかな。
それに続いて取り巻き共も出て行く。
何人か南雲を宥めようと必死になっとるけど、滑稽やな。
…秋一兄さんが俺の肩に手を置く。
顔色は…少し悪い。
「…兄さん、かんにんです。けど…」
「最後の最後で後輩に持ってかれちゃったけど、正直大助かりだよ。俺、全然決まらなかったし、むしろ火に油を注いだ」
「…兄さん、間違うたことは言うてないでしょ」
「どうだろうね。南雲にとっての正解は乃川さんだけだし。乃川さんが異様な程大事な存在…大事というよりは、独占欲の塊みたいなものだけど」
独占したいだけで、ここまで人は手段を選ばず行動に移せるんか？
天野さんに対する印象も、完全にアイツが乃川さんを手に入れたいが故に何としてでも悪女に仕立て上げる…そうとしか考えられん。
「南雲…アイツ、裁判官はおろか…何かしらの事件起きた際、仲裁役や中立ん立場になれる思います？」
「絶対になれない。むしろ冤罪事件を沢山生み出すんじゃない？…思い込んだら余計な情報も何もかも一体聞き入れない…聞き入れようとしないし」
南雲は、乃川さんと自分の邪魔をする人間……実際は邪魔ではなく、普通に乃川さんと会話しとるだけの人間を排除せんとする。取り巻き共を使ってでも。しかし……
「あれは…いずれ強烈に痛い目見るんは間違いないでしょ」
「彼自身がその思い込みに少しでも疑念を抱けば多少未来は変わると思いたいけど……まぁ、今はとりあえず、さ」
秋一兄さんは、周りを見渡す。
って、皆…凄い疲労感、放心状態、何なら涙を流しとる…
「…色々と皆のケアしないをとなぁ」
「そうですね…おい。坂口と古市、手伝って」
「…へっ!?」
「あれ？夢？」
「お前らもか…いや、お前らはマシな方やね」
「…どういう状況？」
「え!?桜野さん!?」
入口から聞こえるんは…
お前ら…何で今になって戻って来たん…？
「箕輪に櫛野…自らの時間を顧みずに乃川さん説得してくれたんか？慎重で丁寧な仕事してくれはったな」
「へ？まぁ乃川さんとは話しましたけど、長くは全然…むしろ拒絶されましたし。で、少し櫛野と色々話し込んでしまって…」
「おい！待て箕輪！喋んな！」
「…まぁええ。そこはお前らの好きなようにしはったら、な」
「「ヒッ…」」
「こら楓！」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
