言葉で制す ページ20
「恥ずかしい…そう、恥ずかしいんだ」
フッ、と秋一兄さんの表情から…笑みが消える。
「君には色々と聞きたい事や言いたい事があるけど…何と言うか、へぇ…」
「あ？何すか？」
「…良くも、俺の大事な仲間に屈辱な暴言を吐きやがったな」
「はぁ？」
「俺は、お前やお前の仲間らがどう思おうが、どうだって良い。お前が俺に対してどんなイメージを抱いているか、俺がこれまでにどういう半生を歩んだか…どうせ知る訳ないし、知りたくもないだろ？
お前だって、俺や皆に、お前自身がどういう人生を歩んだかとか、そういうの教える気ないだろ。
まぁ…気持ちだけは知って欲しいみたいだけど、生憎そういう「構ってちゃん」とか「察してちゃん」とか、俺そういうの嫌いだから、その辺はゴメンよ？」
あ〜……
「え…桜野さん、雰囲気ガラッと変わったよな？」
「清廉された王子様から、腹黒い王子様になったというか…」
「安心せぇ。兄さんのガチギレモードは敵にしか向けへん。普段は優しい方や…怒らせるとホンマにヤバイけど」
「古城さん…要は…結局敵味方関係なく怒る姿は怖いって事ですよね？」
「確かに、今よりも昔を思い出すと…喧嘩もしたし殴り合いもしたよ。
だけど、売れる為には戦わなきゃいけない、番組やライブや色んなモノをより良い形にしていきたい…それは俺や皆もそうだし、お互いに理解し合っていくしかない。
…けど、陰湿で卑劣な愚行で蹴落とすなんて、あってはならない」
ギッ、と秋一兄さんは南雲を睨み付ける。
「戦うのは必ず正々堂々お笑いで…だよ。俺はそういう奴等は全員「カッコ良い」と思うし…褒め合ったり、馬鹿にされたとしても……嫌な気分なんか全然しなかった。むしろそれが楽しくて、可笑しくて、本当に最高だったよ。
俺は、これまでに共に戦った皆を、今も純粋に慕ってくれる皆を仲間だと思ってる。皆も…俺を大事な仲間だと…本当に愛を持って怒ってくれるし、優しくしてくれる。
俺を恥ずかしい奴だと馬鹿にしているお前は、俺を芸人…いや、俺自身を仲間だと認めてくれる仲間の皆を馬鹿にしてるも同然だ。
お前が、俺がここまでどれだけ苦しい思いをして、どんだけ歯を食いしばって、凄く悔しい思いをしたかなんて想像出来る訳ないのは重々承知。そんなお前なんかに、俺の全てを分かって貰おうとか思わないし、語るつもりはない。
語る気が失せる程、俺はお前の言葉が許せないんだよ」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
