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「とにかく桜野さん！神保町漫才劇場にようこそです〜！」
「大・大・大先輩の桜野さんが来られるなんて光栄です！」
「嬉しいです！そしてとってもカッコ良いです！」
「はは…そんな滅相もないよ、俺なんて…あ、コレ良かったら皆さんでどうぞ」
秋一兄さんがそう言うと、紙袋から大量の焼き菓子や餅菓子…それにチョコやゼリー等をテーブルに広げる。
「沢山あるから、暫くは皆のおやつのストックに」
「美味しそう…！」
「こんなに良いんですか!?」
「こんなに…かな？神保町マンゲキ所属芸人の人数を考えたら、少ないかなって心配してたけど」
「いやいやいや、そんな事ないですって！」
それなりに高いだけやなくて…ホンマに美味いお菓子専門店を、秋一兄さんはいくつかピックアップしてはる。
皆の為に用意したお菓子がそれや。
…甘いモンには目がない俺も、何度かご馳走になったし。
そう言えば兄さん…俺に忘れモンある言うてはったけど…何か忘れたかな…？
そもそも兄さん、よう神保町のマンゲキに入れたな。どんなに有名な先輩でも、余程の用事がない限りは通さんやろ。
顔パス…有り得んくはないけど、セキュリティガバガバやな。
しっかし…南雲とそん仲間は…秋一兄さんに対してオモんない顔してはるな…
そう言えば…さっき南雲の奴…秋一兄さんを「芸歴だけの凡人」言うたな。
芸歴だけが長い人間や、凡人が悪い訳やない。
問題なんは、南雲は兄さんに対して…あからさまに馬鹿にする目的でそん発言したという点や。
…改めて、コイツの全てが許せん。
「楓」
ムカムカが収まらん、どないしたらええんや。
今すぐ何もかもわやくちゃにしたろか…
「おーい、楓」
「…あ？」
「何、別の世界に行ってるんだよ…ほら、忘れ物」
そう言うて兄さんが俺に手渡したんは……あ。
「…衣装」
「新しい衣装にしたいって言ってただろ。俺のお下がりを少しリメイクしたモノの…」
家出て漫才劇場に向かう途中で気付いたけど…一応予備の衣装はロッカー(というか収納ボックス)にあるし、ええかって諦めてもうた。
「…別に、こないな場所までわざわざ」
「良いの……ついでに、接触のチャンスが出来た訳だし」
「え……あっ」
なるほど。本命は俺への忘れモンやけど…
偶然もう1つ生まれた兄さんの“目的”は…
「へぇ〜…古城さん、天野だけじゃなくて桜野さんとも仲良いんですね〜？」
コイツ…南雲か…！
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
