変化した関係 ページ12
今、誰が放った言葉…？
古城さんでも、南雲でも、俺でも坂口でも、箕輪でも古市でもない。
女芸人の誰か…でもない。
そもそも、こんなにもギャーギャー騒いどる状態で、ポツリと呟く様に聞こえる訳がない。
まさか…
「…乃川さん？」
「……」
彼女は背を向け、荒れまくる大部屋から去って行く。
「あっ…！」
まさか、ホンマにあの南雲の元カノの群れに…!?
俺は彼女の後を追いかける。
けど…全然追いつかん…っていうか、足早いな！
「のっ……乃川さん！」
ピタリ、と漸く乃川さんは足を止めてくれた。
「乃川さん…？」
「乃川ちゃん！」
後ろから声が聞こえる。
箕輪や。コイツも乃川さんを追いかけたんか。
「乃川ちゃん、やめときなって。南雲の問題は南雲に解決させれば良いだろ」
「………」
また、黙ってもうた。
「…いい加減、話そうよ。俺達、合同ライブやった仲じゃん。その後も遊んだり…」
「………」
「天野ちゃんと何があったのかは、俺達はあんまその辺分からなかったから…全部が全部理解なんて出来ないかもしれない。だけど、折角こうして神保町で会う機会が増えたんだ。だから…」
「…全部、無駄」
「えっ？」
「どんな気持ちで…どんな目的で…天野Aと組んだのか……知らない癖に……」
「………」
乃川さん…やっぱり、天野さんと解散させられて、南雲や色んな芸人らから脅されて…？
「……警備員」
「？」
「ああいうのは、警備員さんに任せた方が良い」
「あ、もしかして部屋から出て行ったんは…」
「あんな野蛮な連中に、単身は勿論だけど…無関係の人間を連れて行く訳ないですし」
なるほど、支配人とか社員の人達に頼もうとしてた訳か。
俺が頷くと…箕輪は複雑そうな表情になる。
「…乃川ちゃん自身はそれで良いの？」
「箕輪？」
「そりゃ、ファンとは言えど道徳的に問題のある奴等は、警察とかそういうのに任せた方が良いのは分かるけど……
乃川ちゃんも天野ちゃんも…コンビ組んでた時もだし…数年前にやった合同ライブの打ち合わせの時も、かなりしつこいスタッフいたじゃん。
けど…その人が自分達のファンだと分かった時、2人してちゃんと叱った上で、純粋なファンでいてくれる事を約束させてたでしょ」
天野さんは、良いファンは必ず大事にする。
それはコンビ時代もそうやった…のは想像出来る。
…乃川さんも、天野さんと同じ考えなんは意外やった。
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
