Arco Iris Ⅳ (ページ2)

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俺の半生も中々に壮絶だけど

秋一の様に、幼少期からずっとずっと長い間、味方もいない上に色んな人間からの理不尽な暴力に耐え続けた人間は、いないと思う。

否、天野ちゃんや…先輩後輩数人はいる。

でも…やはり相方であり、俺が人生で最初に好きになった奴だからだろう。

どんなに誰かが「私は凄く努力した！苦しい思いをした！」「この人がどれだけ辛い思いをしたか！」と主張しても、俺は秋一が関わらない限りは何も響かない。

やはり俺は…秋一に一番感情移入してしまうのだ。

一方の秋一は、そうじゃない。
他人の感情や本音や本性に酷く敏感だ。

荒くれ者、泣きじゃくる者、ダンマリを決め込む者…一見加害者に見える者でも、秋一はそういう人達の心を見抜くのだ。

態度が悪い、遅刻を繰り返す、言いたい事が言えない…そういう人達を、秋一は沢山救って来た。

…また、天野ちゃんの様に正義感が強くて言いたい事を比較的ハッキリ言う子でも、少し会話をしただけで「辛そう」「苦しそう」「悩みがありそう」というのも、分かってしまうのだ。

特に秋一からしてみれば、天野ちゃんは「自分と良く似ている」らしい。
だからこそ…痛みとかそういうのを分かってあげられるのだろう。

もはやエスパーの部類に入るとは思うけど……それが秋一の生まれ持った能力なのか、生い立ちがそれを形成させていったのかは定かではない。

〈けど幸いなのは、Aさんには本当に優しくて頼もしい味方が大勢…しかも近くにいる。Aさんは、作り笑みが多いけど…笑おうとしている〉

「そうなると、天野ちゃんの表舞台とかプライベートとか、そういうのはオレンジ日和…太陽の光みたいな子達に任せますか」

〈うん。特にあの子達は、良くも悪くも正直だし…覆い隠そうともしない。だからこそ、Aちゃんも2人を信じられるんだと思う〉

「俺らは所詮陰って訳だもんなー。ま、どんよりどん底の暗闇に堕ちても、俺らが明るく照らしましょ。打開策はいくらでもあるし…俺らで天野ちゃんの問題が解決出来るか分かんないけど」

〈違うよ〉

「ほ？」

〈Aさんの問題は、Aさん自身で解決するんだよ。

俺達はあくまでも、Aさんが暗闇の中でも必死でもがいて、どうにかしようと奮闘して…本当に何も見えなくなった時に必ず助ける。

真っ暗でも、自分自身でちゃんと生きていける様に〉

なるほど。

それも、お前自身の“あの経験”があったからこそか。