星屑の片割れ ページ1
〈side 萩原仁〉
〈あの子は、俺よりも強かで忍耐強い。きっと“マンゲキ”から逃げる様な真似は絶対にしない。だからこそ……絶対に俺の時みたいな“最悪の展開”だけは、迎えて欲しくない〉
それは悲痛な叫びにも聞こえるし
それは意思表明にも聞こえるし
それは…ひたすら天の川の片割れだった天野Aちゃんを想っている風にも聞こえる。
「……そーならない為に、俺達がいるんだろ？」
〈…あぁ〉
「天野Aちゃんみたいな子は、確かに敵は作りやすいけど……そんなの、誰でもそうじゃんね。人間誰かしら敵や味方が周りにいて当然なんだから。
ただ……そこに「理不尽に」とか「意味なく」とか「何となく」がやたらと目立ってるし…何なら犯罪行為も起きちゃったから、それは流石に第3者が介入しなきゃマズイケースもある訳だし」
〈……〉
「……大丈夫だよ、秋一。まだ天野ちゃんはマンゲキを辞めた訳じゃない。周りの人間を大事に、仲間と共に立ち向かおうとしている。
でも“お前の時”は間違いだったかと言われたら、それは違うって俺は思ってる。
お前があの状況から逃げきろうと必死だったのは、俺も河井達も皆知ってるし……どんな手段を選んでも、そこに正解や不正解はなかった。ただ…最後の最後で敵の頭のネジ全部外れて、暴走しちまっただけ。予測も何も出来なかった。
……お前が“マンゲキ”を守りたかった気持ちは本物なのは、皆知ってる。
天野ちゃんも、神保町のマンゲキを守りたい気持ちが本物なのは、お前も分かってるだろ？」
〈1つ違う点があるとするなら、俺の場合は“マンゲキ”は「俺以外の皆の居場所」だと思い込んでいた。だから…俺は俺自身を大事に出来なくて……皆には本当に悲しくて辛い思いをさせた。
でも彼女はそこを「自分も含めた皆の居場所」だとしっかり認識している。だからこそ本当の仲間と共に戦おうとしている。悲しい思いをさせない様に…〉
「…秋一。少しナーバスになってるぞ」
〈…うん、少し思い出して…しっかりしないといけないのに〉
「そりゃ仕方ない。かつての秋一と今の天野ちゃんの状況、結構似てるからな」
〈でも、それじゃダメだよ。俺は…こういうの許せないし…お節介だと思われても、こんな辛くて苦しくて…悔しい気持ちを、Aさんみたいな優しい子には味わって欲しくない。
俺は…芸人としても人生としても大先輩だからこそ、後輩にはやっぱ笑って過ごして欲しいから〉
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
