糖分補給所（ハイキュー短編集 ）

可愛いはつくれる【影山飛雄】（甘） ページ26

「Aは化粧しても、しなくても変わんねーぞ」

どの口紅を買おうかと店前で10分近く悩んでいた時に、隣にいた飛雄が何気なく呟いた。



『……え？』


変わらない？

そんな…少しでも飛雄に可愛く見られたいと思ってるのに。
飛雄の彼女として隣に立って恥ずかしくないようにしたいと思ってるのに


『そ、そっかー変わらないか！あはは…』


笑って返そうとしたのに声が震えてしまう。あぁ、駄目なのに。泣いたら折角のメイクが崩れちゃう


「っおい！何で泣くんだ！？」

『だって、私はメイクしてもっ、可愛くならないって』

「は？んなこと言ってねーよ」

『言ったじゃん！私はメイクしてもしなくても変わらないって！それって…そういうことでしょ…』


自分で言ってて悲しくなってきて、また涙が零れ落ちる。メイクやり直さなくちゃだな。そう思ってると、顔を両手で掴まれてグッと上にあげられた。

視線のすぐ先には飛雄の顔。

メイクが崩れた顔をまじまじと見られているという羞恥心に耐え切れず、逃げようと必死でもがく。



『っ……やだ！見ないで！』

「何でだよ。すげー可愛い」

『お世辞なんていいよ！今、メイク崩れちゃってるし。泣き顔ブサイクだし…！』


それに、さっき飛雄は私のこと可愛くないって言ったじゃんか！

そう言おうとした。
だけど、全部言い終えるより早く私の口は飛雄の唇で塞がれていた


『………っ！？』


逃げようにも顔をガッシリと固定されていて逃げられない。羞恥心に耐え兼ねて、思わず目を瞑る。
数秒後、自由になった私の口より早く飛雄が口を開いた。


「誰が可愛くないなんて言った！！Aはメイクしてもしなくても、誰よりも可愛い。だから変わらないって言ったんだ！文句あるかコラ！」

『……！！』


怒ってたのは私のはずだったのに。気がついたら飛雄の方が怒ってた。


『っ…可愛い？』

「あぁ。信用できねーんなら……何度でも言ってやるよ」


そう言うと飛雄は顔を耳に近づけて、何度も何度もその言葉をつぶやく。

可愛い、と


『っ、もうやめ…』


やめて

そう言って彼から離れようとした瞬間、背中に腕を回されてグッと引き寄せられた。


「その照れてる顔も可愛い」

『…っ！！』


あぁ、もう
この…天然タラシめ！

もっと、もっともっと可愛くなってやるんだから。
覚悟しててよね！




“可愛いはつくれる”


(君からもらう可愛いって言葉は、どんなメイクより私を可愛くしてくれる)

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