0 2 ■ 陽炎のよう / Red. ページ7
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「誠に申し訳、ありませんでした」
若くして役職に就いたものの気苦労が絶えなかった。
尻拭いを全部させる部下に
今時パワハラという言葉を知らないのかと言うほど高圧的な上司。
毎日毎日、エナジードリンク一本で踏ん張る残業に
うっかり寝そうになる静かな電車の中。
……何より。
「おかえりなさい」
ドアを開けると何かを期待したような顔の妻。
ちくりと胸が痛む。
何とか笑顔を取り繕って「ただいま。美味しそうな匂いがするな」と呟いてスーツの上着を脱ぐ。
一緒に向かい合って「美味しい」「ほんと？」
「ほんとだよ」「嬉しい」なんて上っ面のやり取りをして。
そんな妻の心も俺の心も此処にあらず、だ。
なぜなら
「涼太………、あの、今日は」
「……ん？」
「今日はその、あの日みたいなの。だから」
「……そっか」
この間も断って、一昨日も断ってしまった。
しかも今日は月に1度の授かりやすい日ときた。
そしたらもう、俺が断る術は残されていない。
「……うん、分かったよ。
簡単にシャワー浴びてくるから、先に待っていて」
そんな風に言って頭を撫でてやると、妻はこの上なく
幸せそうに笑うんだ。
……そうするとまた、ちくりと胸が痛む。
あんな顔をさせたくて結婚したわけじゃない。
今だって、俺は彼女を心から愛している。
その気持ちに嘘は１つもない。
だけど中々出来ない子供に、日々の仕事のストレス、
思うようにいかない毎日に、逃げ出したい気持ちが強くなっていたのが本音だ。
俺は何もかもダメなのではないかって。
自己嫌悪もいいところ。
妻を悲しませても、笑顔にさせても
心がどんどんからっぽになっていくように感じていた。
シャワーをきゅっ、と止めて自分の顔を鏡で見たら
ひどく疲れた顔をしていた。
でも、行かなければならない。
ぱんっと１つ頬を叩いて自分を奮い立たせると
彼女が待つ寝室へと歩を進めた。
「……おまたせ」
「…うん、全然。…急かしちゃったかな？」
「そんなことはないよ。Aが眠っちゃうといけないからね」
そんな風に呟いて身体を軽く抱き寄せる。
倒して、部屋の電気を落とすと始まる、…緊張の時間。
情熱的な行為のはずなのに
その心はまるで凪のようにいつも静かだった。
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ありす - 全部凄く面白かったです！ドロドロ感が最高です！！特に奇術師の愛の地獄がぶっ飛んでいて好きです！！いつも楽しく読ませていただいております！！続き読めたら読みたいです！！いつも楽しい作品をありがとうございます🙇♀️ (7月31日 1時) (
レス) @page50 id: b62757b173 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ゆきさん» ゆき様心躍るコメントを有難うございます😭♡そんな風に言って貰えれば嬉しいなと思って書いていたのです！私自身こんなお話が好みでどうもダークめにしがちなのですが、その部分を共感して頂けているようですごく有難いです。心から感謝です😭♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、お待ちしておりました（笑）とんでもない、ただのカタストロフィなんです😭(?) 3つも挙げて頂けて歓喜です！いつかユッピン様にドロドロが好きでと言って頂けてからこの路線で書いていくことに自分でもハマれました。本当にありがとうございます！♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - みりぽんさん» みりぽん様っっ！今回も最後まで見てくださってありがとうございます😭♡ニコイチは現代ぽくない上にぶっ飛びレベルがちょっとアレだったので不安でしたが…。そう言って頂けて本当に良かったです😭ありがとうございます♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - なかさん» なか様いつもありがとうございます！そんなに褒めて頂けて、もう…もう…羽ばたいちゃいそうです😭♡こちらこそ、毎度感動するご感想を送ってくださり心から感謝です！今後もどうぞよろしくお願いします🙇♀️ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Haruno
| 作成日時：2021年11月6日 6時
