花狂いとカタストロフィ - [ 短編集 ] -

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「ほ、ほんとに…綺麗だなあ〜」と
自分で押し倒したくせに、私を見下ろしながら顔を赤らめる阿部さん。









「……離して」

「ど…、どうして？」

「…貴方のこと好きじゃないから」

「っ…はは、分かってても面と向かって言われると
ショックだなあ……はは、あはは。そっかあ〜」








「でもね？」と、ずいっと顔を近づけてきた阿部さん。



挙動不審なのか大胆なのか、
さっきから様子がコロコロ変わりすぎてよく分からない。








「僕は…貴女のご両親から、こうしても(・・・・・)いいって許可を貰ってるんです」








「もちろん僕の両親も。貴女のことなら大歓迎なんです」と彼は嬉しそうに笑う。





どうやら私が知らないところで話はだいぶ進んでいるらしい。


彼は興奮を抑えられない様子で
顔を更に近づけ、横を向いて拒否する私の首筋に鼻を寄せると


「ああ、甘い……僕の好きな香りだな〜」と囁いた。










「Aさんにとっても悪い話じゃないでしょ…？
僕と貴女が心も身体も結べば、お金がすごく動くし
皆……みんな幸せになるよ、？」










その時、彼氏に言われたことが頭をチラつく。


「貢がせるだけ貢がせて捨てる」。








彼から言われたんだし、私もお金は好きだし

…何より阿部さん。








眼鏡を外したらそんなに外見は悪くない。

…イモくさいのは変わらないけど。








その後、拒否したり、あしらってみても
あまりにしつこいから、もう今晩くらいは相手してあげるかと根負けしたと言っても過言ではない。











「……え？Aさん……！？」

「押し倒したけど、…その先できないんでしょ？」












ぐるりと体制を変える。


目をきょろきょろさせる阿部さんを組み敷くと、
彼にそっと教え込むようにキスをしてあげた。




……そして。













「……っぁ、だめ、Aさっ…！」

「……っ」














私は平然と好きでもない彼と身体を繋げた。





あんなに拒否してた相手と、こうもあっけなく。





こんな行為に慣れまくりの私を見て引いてくれたら
それはそれでいいと思ったけど、

行為が終わった後の彼の様子は違った。









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私をぎゅっと強く抱きしめて、阿部さんは言った。


「も、もう僕の物ですよね？…僕だけを見てくれますよね？」……と。








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