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彗星の如く現れた岩本の若旦那は3日にいっぺん通ってくれるもので、私の心も既に彼に惹かれ始めていた。
「主様、最近は？」
「…ああ、夜はちと忙しい」
「そう。……それはなんざんす？」
「…お前に似合うと思ってな」
そう言って差し出した風呂敷の中身は
息を呑むほど美しい3本の
山吹色に、藤色、そして桜色。
これは嬉しい、と思うと同時にふと心がざわめく。
「…ねえ、こんな一級品、ほんにわっちに？」
「…ああ、構わねえ」
「…でも気が引けるわ。こんなに、3本も」
「受け取ってくれねえか？」
「俺の気持ちは…、いらねえか？」と
捨てられた子犬のような旦那の目。
旦那はどうしてか
すごく男前で、血気盛んな強面であるのに
私と居る時はものすごく、
弱いもののような、まるで幼な子のような
ひどく怯えたような態度と表情になるのだ。
それほどまでに私を好いてくだすったのだといい聞かせても、変にざわつく、……この胸の奥。
旦那は恐る恐る私に近づくと、
その大きな男らしい手で、私の頬にそっと触れた。
「……とんでもねえ。主様からの気持ち、ありがたく受け取らせて頂きんす」
そう囁いて、笑えば、母に褒められ安堵する子供のような笑顔。
旦那のくしゃくしゃになる笑顔が好きだと思った。
だけど私を抱く時は旦那も男になる。
気持ちを行為に乗せて精一杯に私を愛した。
「…っあ、主様っ」
「…A、」
「…ん、ぁ……、なに、？」
「…俺が1番だと…言ってくれ」
旦那の鍛え上げられた胸板に触れ、
にこりと微笑む。
「主様が、1番でありんす」と囁いて抱きしめれば
より一層加速する腰つき。
そう、1番という言葉は、魔法の言葉。
遊女の口説で常套句。……客を繋ぎ止める、悲しき言葉。
「……っ、どうしたらお前は俺のものになる？」
そして、ほら。
本気の目で貴方は言う。
私がここから出ることはきっとないと分かっていても、
…もしも
もしも、この人が私に自由を齎してくれたのならと
想いは募る。
「主様がわっちを連れ出してくれたら……わっちの心も身体もすべて捧げんす」
もちろん そんなのは夢のまた夢。
そんな他愛もない取り交わしが
束の間の恋人に火を付けたとはつゆ知らずでいた。
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ありす - 全部凄く面白かったです！ドロドロ感が最高です！！特に奇術師の愛の地獄がぶっ飛んでいて好きです！！いつも楽しく読ませていただいております！！続き読めたら読みたいです！！いつも楽しい作品をありがとうございます🙇♀️ (7月31日 1時) (
レス) @page50 id: b62757b173 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ゆきさん» ゆき様心躍るコメントを有難うございます😭♡そんな風に言って貰えれば嬉しいなと思って書いていたのです！私自身こんなお話が好みでどうもダークめにしがちなのですが、その部分を共感して頂けているようですごく有難いです。心から感謝です😭♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、お待ちしておりました（笑）とんでもない、ただのカタストロフィなんです😭(?) 3つも挙げて頂けて歓喜です！いつかユッピン様にドロドロが好きでと言って頂けてからこの路線で書いていくことに自分でもハマれました。本当にありがとうございます！♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - みりぽんさん» みりぽん様っっ！今回も最後まで見てくださってありがとうございます😭♡ニコイチは現代ぽくない上にぶっ飛びレベルがちょっとアレだったので不安でしたが…。そう言って頂けて本当に良かったです😭ありがとうございます♡ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - なかさん» なか様いつもありがとうございます！そんなに褒めて頂けて、もう…もう…羽ばたいちゃいそうです😭♡こちらこそ、毎度感動するご感想を送ってくださり心から感謝です！今後もどうぞよろしくお願いします🙇♀️ (2021年11月30日 19時) (レス) id: 33b6f5a04f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Haruno
| 作成日時：2021年11月6日 6時
