花狂いとカタストロフィ - [ 短編集 ] -

0 6 ■ 徒花は夢を断つ / White. ページ28

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私がした暴露によって
翔太さんはあの百貨店から消えてしまった。






あんなに魅力的で、死にそうな程溺れたというのに

百貨店で喚く私を見て取り乱し、
妻である女性に謝り倒すその姿に気持ちがスッと
冷めていくのを感じた。








でも

人の不幸を吸って、舐めて、摂り尽くしたというのに
私の心はまるで満たされなかった。




だからイヤリングも捨てた。




アレを見れば彼との情熱的な行為を思い出して
苦しくなるだけだ。




何でもないふりをして1日過ごすと

お酒を浴びるように飲んでは1人咽び泣き
私は誰の温もりもない冷たい布団の中で毎日眠りに落ちた。










ああ、だけど今日は温かい。


夢でも見ているの？


翔太さんの夢かなと思って忘れたいその名前を呼ぶと






「それ誰？」という

聞き馴染んだ若い男の声が……１つ。












「……誰を想って泣いてるの？……姉さん」










深夜。私の家にも布団の中にも躊躇なく入り

空っぽになった身体を後ろから抱きしめてくる人物は
振り返らなくてももう知ってる。





首のあたりと腰に回された腕が鬱陶しくて振り払い、
「……どっかいって。何しに来たの」と
布団にくるまりながらぶっきらぼうに呟いた私を

それでもしつこく抱きしめるのは




義弟(おとうと)の、ラウ。












「俺さ、姉さんが泣いてるのなんか本能的に分かっちゃうっていうか？超能力、あるのかも」

「……ふざけんな、バカラウ」

「ねえ、今度はどんな人を不幸にしたの？
…こんなにダメ人間ぽくお酒ばっか飲んじゃってさあ」












「ほんとダメな人だなあ、僕の姉さんてば」、。





そんな風にディスりつつも優しい声色のラウは
子供の頃のようにぎゅうっと私を抱きしめて離さない。








ラウは私なんかが姉でも

姉の私が人にどんな悪行を働いていたとしても、
絶対に私を突き放すようなことはしなかった。






むしろ恋人にするそれかのように

ベタベタとくっつき、甘えたように話し、
時に甲斐甲斐しく私の世話をしにくるのだ。










「ねえ、ご飯ちゃんと食べてるの？」

「……っるさい」

「んーじゃあ明日一緒に外食行こっか？
知ってる？裏の通りにおしゃれなカフェできたんだよ？」

「……」

「あ、ねえ。生活費は？足りてる？」











「……ない」というとラウは布団を剥いで私をそっちに向かせると、ハイこれ、と無邪気に笑って8万円を渡してくれた。






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