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俺はゆっくりとベッドに腰掛けて、
気持ち良さげに眠る山田くんを見つめた。
「…。」
今俺の前で無防備に寝ている山田くんは、
…俺の知らない“山田くん”で構成されていた。
俺は、自分がいつの間にかあの頃のあどけない寝顔を探していることに気がついた。
途端に、虚しくなる。
…俺だけが、あの頃の色褪せそうな記憶に、
必死になってしがみついている。
__
例えば、はじまりの日。
柔らかい陽射しが降り注ぐ、5月最初の日。
新しいクラスになっても、
俺の日常は大して変わらなかった。
その証拠は、放課後、ひとりで図書室に向かっている俺自身。
入学前から高校は帰宅部だと決め込んでいた俺は、ちょうど2年前のこの時期から、ほぼ毎日放課後は図書室で過ごしていた。
別に友達がいないわけではない。
学校帰りに友達とカラオケ、なんて高校生らしいことをしたことがないわけでもない。
けれど、なんだかんだ、
最後に戻ってくるのはここだったのだ。
いつも俺が座っているのは、
窓側の、奥から2番目の席。
今日は、暖かい陽が当たって気持ちよさそうだな、なんて思いを巡らせながら図書室に一歩踏み入れたそのとき。
違和感を覚えた。
その理由はすぐにわかる。
いつもの俺の席に、見たことないやつが座っていたからだ。
そこ俺の席なんだけど、とか、
そんなことは思わなかった。
…思わなかったけれど。
「…ねぇ、君、」
俺は、全くの無意識のうちに、
そいつに声をかけていた。
「はい…?」
澄んだ瞳と、視線が交わった。
不思議そうな顔をして俺を見上げるそいつは、
一言で言うと、“真っ白”だった。
何にも汚されていない、透き通るような白。
俺はそんな彼を、
綺麗、だなんて思ってしまった。
「あ、いや、ごめん。なんでもない。」
ふと我に返って恥ずかしくなる。
俺らしくない、こんなの。
一刻も早く立ち去りたくて、
彼に背を向けて逃げるように図書室を出た。
これが、俺と山田くんの出会いで、
はじまりの日だった。
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ゆめまる。 - 早く更新して欲しい!! (2019年1月5日 22時) (レス) id: 03ea0da012 (このIDを非表示/違反報告)
# や ま だ り さ(プロフ) - はじめまして!この作品とっても面白いです!これからも頑張ってください!あ、宣伝してもいいですか?「〜HSJのBL短編集〜」っていう作品を書いてるので是非見に来てください♪評価お願いします! (2018年11月26日 7時) (レス) id: b6b48a1626 (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - あんこさん» お読みいただきありがとうございました!素敵なお話だなんて…嬉しすぎるお言葉です…。 (2018年11月24日 23時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - あひる☆さん» いつも楽しく読ませていただいております〜!!続き、書いてみようかなぁなんて思っていたり…!もしお話公開したら是非見に来てくださいね♪ (2018年11月24日 23時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - はじめまして!とっても素敵なお話でした…お疲れ様でした!! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 31e5093717 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りょんな | 作成日時:2018年11月11日 17時