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仕事帰り、最寄駅より1つ前の駅で電車を降りて、ケーキ屋に寄った。
すっかり暗くなった辺りに、
ぼんやりと温かな明かりが漏れている。
“OPEN”と書かれた札がぶら下がっているドアを開けると、チリンッ、と鈴の可愛らしい音がした。
閉店時間間近のお店だ、もともとそんなにケーキが残っていることは期待していなかったけれど、想像以上に空っぽなショーケース。
「いらっしゃいませ。
ごめんなさい、もうほとんど残ってなくて…。」
申し訳なさそうにそう言う店員さん。
遅く来たのはこっちなのだ、彼女は何も悪くない。
「お決まりでしょうか?」
ショーケースを見回すと、
クリームと苺がたっぷり乗った見るからに甘そうなケーキと、
砂糖控えめの暗い色のチョコレートにコーティングされたツヤツヤのケーキがひとつずつ、目に入った。
「じゃあ、このショートケーキとチョコレートケーキをひとつずつ。」
「ありがとうございます。」
にっこりと微笑む店員さんに見送られながら店を出た。
一駅分電車に乗るのも面倒で、
歩いて帰ることにした。
ケーキを崩さないように、
ケーキを持つ手をなるべく揺らさないで歩く。
ケーキを買ったのは、山田くんへの言い訳だった。
ケーキを一緒に食べながら、昨日のことを謝る時間が欲しい。
俺の謝罪の言葉に不機嫌そうに眉をひそめた山田くんに、ありのままの感情をぶつけてほしい。
2人で甘いケーキを食べて、あの水色のアイスキャンディーを一緒に食べる約束をしたことを忘れてほしい。
何より、ケーキを食べ終わったら、
“本当はあの頃からずっと好きだった。”
なんて、ほろ苦いチョコレートクリームと甘い生クリームの中間みたいな、そんな告白がしたい。
そうして2人でたくさん泣いて、
新たなスタートを切りたい。
そんなワガママで自分勝手な願望を、売れ残りのふたつのケーキに託した。
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ゆめまる。 - 早く更新して欲しい!! (2019年1月5日 22時) (レス) id: 03ea0da012 (このIDを非表示/違反報告)
# や ま だ り さ(プロフ) - はじめまして!この作品とっても面白いです!これからも頑張ってください!あ、宣伝してもいいですか?「〜HSJのBL短編集〜」っていう作品を書いてるので是非見に来てください♪評価お願いします! (2018年11月26日 7時) (レス) id: b6b48a1626 (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - あんこさん» お読みいただきありがとうございました!素敵なお話だなんて…嬉しすぎるお言葉です…。 (2018年11月24日 23時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
りょんな - あひる☆さん» いつも楽しく読ませていただいております〜!!続き、書いてみようかなぁなんて思っていたり…!もしお話公開したら是非見に来てくださいね♪ (2018年11月24日 23時) (レス) id: a65994f48d (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - はじめまして!とっても素敵なお話でした…お疲れ様でした!! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 31e5093717 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りょんな | 作成日時:2018年11月11日 17時