あっちもこっちも全部俺！ 2

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直人さんから一時帰宅のお許しが出た。
とは言っても、着替えやら何やら取りに行くだけなんだけど。
それでもAの顔が見られるから嬉しい。
顔を見て、改めてちゃんと自分の想いを伝えたい。
このまま電話でさようならなんて絶対イヤだ。

健二郎さん付き添いの元、俺は久々にマンションへと帰って来た。

『ただいま！』

ドアを開けて俺は愕然とした。

『荷物がない…。Aとがんちゃんの荷物が1つもない！！』

いつも3人で一緒にご飯を食べてたこたつも、がんちゃんとチャンネルの取り合いをしたテレビも、いい匂いのするシャンプーも、ペアのマグカップの片割れも、何もかもが部屋から消えていた。

残されたのはきちんと畳まれた俺の服と、少ない私物だけ。

『2人ともどこに行っちゃったの！？ねぇ、健二郎さん！知ってるんなら教えてよ！！ねぇ！！』

健二郎「ごめん。ホンマに何も知らんねん…。」

うなだれた健二郎さんの顔からは"ウソの欠片"も見られなかった。

『ここが俺の定位置で、隣にAが座って、向かい側にがんちゃんがいて……毎日賑やかで温かくて楽しかったんだよ…。』

健二郎「………。」

『洗面所には色違いの歯ブラシセットが3つ並んでて、誰が先に使うかジャンケンしたり、お風呂で俺が勝手にAのシャンプー使うからAに散々怒られたりして…。つい最近までここで3人で生活してたんだよ…。』

健二郎「臣ちゃん………。」

この部屋のどの場所にも思い出がたくさんあった。
なのに今は、ただ静まりかえった空間がそこにあるだけ。
俺の居場所はここにはもうない。

涙は止まることを知らずに溢れ続け、ポタポタと床を濡らすたびにAやがんちゃんとの思い出が壊れていく。

俺はそれに怯えるように、その場に座り込んで動けなくなった。

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