大切だから嘘をつく。嘘をつくほど大切だから。

24 哲也 ページ24

久しぶりになおっさんから飲みの誘いがきた。
何やら話があるらしい。
俺は仕事終わりで、急いで指定された店にやってきた。

なおっさんは頼んだアルコールを前に、頬杖をついてボーッとグラスを眺めている。

『お待たせ。先に飲んでてくれてよかったのに。』

直「お疲れ様。急に呼び出してごめん。」

その様子からして、Aのことで俺を呼び出したのは一目瞭然だった。

『まだ仲直りしてないの？』

直「って言うか……新たな問題がね。」

なおっさんは美作麗美のこと、Aが倒れたこと、そして登坂がAを医務室に連れて行ったきり三代目ルームに戻って来なかったことを事細かに説明した。

直「俺、彼女のことはあんまり得意なタイプじゃないけど、Aに何かするような人には思えないんだよね。かと言って丸っと信用できる人だとも思えないし…。メンバーは彼女にちゃんと話を聞いた方がいいって言うんだけど…。」

『なるほどね。そりゃあ彼女と話はした方がいいとは思うけど、もし彼女がウソをついてたとして、本当のことを話すかな？』

話さないと思うなぁ、俺は。何としてでもAを悪者にするだろうね。

直「そこなんだよね…。でもAが何も言ってくれない限り、それがウソかどうかも判断できないでしょ。…………臣には話してるのかな…。」

『訊いてみればいいじゃん。同じグループなんだし。』

なおっさんの話を聞く限り登坂はかなり本気だ。
美作麗美とAの間でふらふらとどっちつかずにいるなおっさんと違って、完全にAのことを信じきっている。
そんな登坂もきっと何も言わないんだろうな。

直「こんなこと初めてだよ…。俺、どうすればいいかわかんないんだ…。」

なおっさん、ホントは凄く簡単なことだって何で気づかないの？
Aの性格を誰よりわかってるのはなおっさんでしょ？
登坂のように一点の曇りもなく、Aのことを信じてあげればいいだけの話だよ。

それに気づかなかったら、もう2度とAは戻って来ないよ…。

『俺には何とも言えないけど、強がりとか意地とかプライドとかそんなの全部捨てて、真っ白な心で全てと向き合うしかないと思うよ。逃げてても状況はよくならないしね。』

ごめんねなおっさん。俺からはこれぐらいしかアドバイスできないんだ…。

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