大切だから嘘をつく。嘘をつくほど大切だから。

23 臣 ページ23

『よかった…。気分どう？』

まだ気だるさが残っているのか、Aはボーッと天井を眺めている。

『まだ少し怠そうだね。もう少し休む？俺ここにいるし。』

俺がそう言うと、Aは何かを思い出したかのように急に起き上がった。

『ちょ、まだ急に起きちゃダメだって！』

A「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。もう大丈夫ですから…。」

止めようとしても無理やりベッドから出ようとするA。
何としてでも俺から離れようとするのか…。

『俺さ、わかったよ。Aがそんな態度をとる原因。』

どれだけ俺がAのことを想ってたと思うの？
"直人さんの彼女だから"って自分に言い聞かせて、どれだけ我慢してたと思うの？
直人さんだけじゃなく、俺たちにまでおかしな態度をとるようになってからも、俺はずっとAのことを考えてた。
そして今回のことで確信したんだ。

A「何のことですか？」

嫌なことを思い出させるかも知れないけど俺は言うよ。

『美作麗美に何を言われたの？』

あの女の名前を出した途端、Aはピクッと肩を震わせ、その場から動けなくなった。
顔色はどんどん悪くなり、また吐いてしまいそうなのか、苦しそうに顔を歪める。

俺は無我夢中でAを抱きしめ、背中を優しく擦りながら話を続けた。

『もうウソつくなよ。がまんすんなよ。全部話せとは言わないから、今背負ってるもののほんの少しでも俺に背負わせてくれよ。な？』

A「…………っ。」

それでいい。今は俺の胸で泣いてくれるだけでいい。
少しずつでも、俺に心を開いてくれれば、俺が必ず助けてやるから…。

もうAを直人さんに渡すつもりは、ない。

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