【不機嫌なモノノケ庵】泡沫に響く唄【男主有】 (ページ30)

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『イツキ…天皇である僕は嫌いになった？』

晴「！なってない。」

ふっと僕の顔が綻んだ気がした。
右翼がパサリパサリと小さく揺れる

『何だかあの時みたい』

晴「あの時？」

『うん、ヤヒ____』

「あーん！帰ってきていたのねぇえ！！」

ずっとイツキを見て居たから、前方より突っ込んできた妖怪に気付けなかった

ぎょふっ！！？と変な声を漏らして押し倒される僕

太陽が真上にあって逆光になるため、倒してきた者の顔はよく見えなかったが…薬の匂いで特定できた

いろんな意味でヤク中の彼女……

『せめて店の中でヨロシク…コウラ…』

コ「そうねェ今は天皇様のご身分で来てるからァ…ここで貴方の薬を作ったら高値で売れそう♡」

切実にやめてください。

頬を染めてうっとりするコウラを上からのかして起き上がる

シズクは元気にしているだろうかと気分を紛らわせながら店に入った

コ「その子怪我してるわねェ。A、シズク少し手伝ってくれるかしらァ」

シ「はーい！」

『えっ？シズ…わ、わかった…！』

シズクを見かけないし、新しい子を雇ったのかと思っていたが…
この水色の髪の娘はシズクだったらしい

確かによく見ればイモリの尻尾が見えている…

コ「ふふ、シズクは上手く化けれるようになったでしょォ？」

『妖気が同じだと不思議に思ってたけど…そうか。気付かなかった』

僕の心を察したコウラがクスクス笑う

『シズク、ただいま。』

シ「うぅ～。おかえり！なのじゃぁぁあ！！」

『わっ！』

薬瓶ごと僕に抱きついて来たシズクを受け止める

イツキと隠世に定期的に来てはいたが、亀薬堂に顔を出すのはイツキで、僕はいもり池だったから中々会えなかったのだ

定期的の周期も次にが長いのだけれどね

コ「こーら、もう治療終わっちゃうわよォ」

シ「はっ！シズクとしたことが」

勢い良く離れて白モフに駆け寄るシズク

ほんとはコウラ、僕とシズクが話しやすい環境を作れるようにしてくれたんだよね

外にはイツキとそれに説教されるハナエが居るし

コウラを見るとニッコリ笑ってお代は鱗5枚でイイわよォと言ってきた

今回はいろいろお世話になったし

5枚くらいなら…

なんて思ってみた今日は、実に平和で自分の存在が何者かを忘れるには丁度良すぎる時間だった。