5_亀薬 ページ26
意識が浮上したのは、頭に乗せられていた氷嚢の雫が頬に落ちた感触後
あぁ、水だ
心地がいい
そんな安らぎの中で僕は目を開けた
晴「おい、顔色悪いな」
『イツキ…?ミツチグラ様、ハナエ…どこ?』
晴「ミツチグラ様は結構前に帰った。芦屋は…」
何だか言いにくそうに言葉を詰めたイツキ
ほんとにハナエはトラブルメーカーと言うか…何と言うか…
それでいてちゃっかり仕事を解決させていたりするから憎めないんだよね
晴「帰った、が。………。」
リンリンと風鈴が鳴ったので掛け軸に目をやる
「ハナエも今度、隠世に付いて来るのよ」
『そうか。……え?』
晴「ほら見ろ物怪庵。Aだって驚いてるだろうが」
別に…驚きはしたけど、ダメとは言ってないよ…?一応。一応ね?
物怪庵の有無言わせない気持ちが直に伝わってきたので、ダメとは言わなかった。
そもそも思ってないんだけどさ
『うーん、行ちゃんに会わなければオッケー…かな、僕は』
晴「…。」
『もうハナエに約束取り付けてるんでしょ?』
晴「そうだが…」
『じゃあ取り消しとかは物怪庵の主として有るまじき行為だよね、物怪庵?』
ねー!と掛け軸に記される
イツキは観念したのかため息を吐くだけだった
ゴホッゴホッと僕が咳き込む
ハナエが帰っているのならと妖怪の姿へ戻った
晴「A。隠世に行く日まで物怪庵から出るな」
『うん』
物置に布団をとりに行くイツキを見ながら僕は物怪庵に喋りかける
物怪庵は時折相槌を打つように風鈴を揺らしていた
____(物怪庵。僕は永く生き過ぎてる気がするんだ。
だから現し世に長く居られない
イツキよりも先に消えてしまったらどうしよう。)
リンッ…
最後に一際大きく響いた音は
大丈夫よと言っているように、とても優しい音だった
僕はセイレーンの末裔。
しかし、片親に予言する力を備えたハルフゥをもつ
色濃く受け継いだのはセイレーンだから予言の力はない
だけど、時折感じることがあるんだ。
先に起こる未来の出来事とか、何となく
71人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:氷夜猫 | 作成日時:2017年3月23日 18時