castle～かとう編～ (ページ13)

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それから目的地までは
それほど時間はかからなかった。

「もう着くの？全然話せなかったね。
これ、俺の名刺だから気軽に連絡して？」

荷物をまとめ、
ヘッドホンをカバンに入れていると
連絡先を渡している声が聞こえた。

「あ、ハイ。」

慌てて名刺を差し出す彼女。
あーあ、、まんまと連絡先ゲットされてやんの。

「ふふ、Aちゃんの連絡先ゲットー！
本当、騙されないように気をつけなよ？」

「なっ！え？そういう事言うなら返して？」

俺には壁を作ってるのに、
初対面の男にはもうタメ口かよ…

「ゔぅん…Aさん、行くよ。」

イチャイチャしてる様子にイライラして、
大人気なく2人の会話を遮断した。

「あ、はい。すぐに！
楽しい旅行になると良いね！じゃあね！」

「ありがと、またね！」

俺と彼女は仕事の関係しかないのに、
彼への対抗心から名前で呼んでしまった。

気付かれているのか、引かれてはいないかと、
ドキドキしたままホームに降りた。

「加藤先生、お腹空いてますか？」

「え？」

もしかして、腹が減って不機嫌になってると
思われてんのか？

「ちょうどお昼ですし、
ホテルに行くには少し早いので…。」

「ああ、そうだな。何か食いたいものある？」

「いえ！何でも。先生の行きたい所へお供します。」

ふっニコニコして…
なんだ、自分が腹減ってただけか。

「じゃあ、こっち。
あと、今更だけど外で先生って呼ばれるの
恥ずかしいからやめてもらえない？」

「加藤さん、で大丈夫ですか？」

「ん…。まあ、それでいいよ。」

自分で呼ばせておいて、
確認されるとちょっと照れくさい。

「…～っき、…まえ…」

「ん？」

「あっ独り言でした！どうぞ乗って下さい。」

そういえば、“Aさん”と名前で呼んだこと
何とも思われてないのか？

気まずくなるのは勘弁だけど、
全く気にされないのは少し癪だ。

タクシーに乗り込み
以前から気になっていた店へと向かう最中、
既婚かどうかよりも
彼女の気を引く方法に考えを巡らせていた。