castle～かとう編～ (ページ1)

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加藤side

「育休取れたんすね。」

担当編集さんが育休を取るということで
新しい担当さんを連れてうちに来た。

「男だろって言われるの覚悟してたんですけど、
編集長、子育て殆ど出来なかったこと
後悔してるらしくて、快諾してくれました。
ただ、加藤さんにはご迷惑お掛けしてしまって、
申し訳ございません。」

「いえ、戻ってきた時にまた宜しくお願いします。」

「こちらこそ、宜しくお願いします。
で、その、今後担当になるのがこのAです。」

「AAと申します。
よろしくお願いいたします。」

「どーも。加藤シゲアキです。
宜しくお願いします。」

俺と歳の近そうな女性。

失礼だけど、
特別見た目が整ってるわけでもないし
タイプなわけでもなかった。
名刺交換の際に彼女の左薬指に光った指輪に、
恋愛感情が仕事の邪魔をすることはないと
安心した。

そんなことより、
彼女が今までグルメ雑誌や、
生活情報誌、タウン誌しか担当したことがない
と言うのが気になった。

「不安にならないでというのも無理かと思いますが、
加藤さんの小説にAは役立つと思います。
至らない所は部署のみんなでサポートしますし、
加藤さんに期待しなくなったわけではないですよ！」

「よろしくお願い致します。」

「＊＊さん、俺の心読まないでよ。」

「出来るだけ不安は少ない状態で
引き継ぎたいですから。あと半月は出勤してるので、
他に心配なことがあれば仰ってくださいね。」

「わかりました。」

Aさんは緊張していたのか、
お邪魔します、失礼します、
よろしくお願い致します、
の3語しか話さなかった気がする。

次に来る時は一人だろうけど、
会話できるかな？

できるか、仕事だもんな。