Best for someone. ページ1
_ The boy side.
_
今日は知らない人がうちに来ていた
お客さんが来るからと、父さんと母さんは僕とジェームズに大人しくしていなさいと注意する。
いつも落ち着きがないのはジェームズなのに、なんで僕まで注意されなきゃいけないんだ
すでに透明マントを掴んでしたり顔の双子の兄。
今日こそは一切の関わりを持たないように、お客さんのいるリビングで絵本を読んでいることにした
寝る前に母さんが何度も読んでくれた、とっても弱いヒーローのお話
いつも悪者に負けちゃうけど、気づくと誰かが助けにきてくれて、悪者をみんなやっつけちゃうんだ
ジェームズはすぐ寝ちゃうから、この絵本の結末はきっと僕しか知らない
いつもピンチに駆けつけてくれたのは別の誰かじゃなくて、自分の中のもう1人の自分だったってこと
ふと、絵本の世界から意識が現実に引き戻された
「あんたらもようやく一人息子を授かって、」
知らないおばさんの口から発せられた何気ない言葉の意味を、何故か一瞬のうちに理解してしまった
"ようやく授かった一人息子"
迷うことなく、それは僕ではなくジェームズのことだと思った
しまったという顔で2人がこちらを見る
あの時の顔を今でも鮮明に覚えている
やっぱり、血の繋がった子供じゃないんだ
僕は父さんやジェームズみたいにひどい癖っ毛じゃないし、目だってすこぶる良い
顔も全然似てないし、2人はなんでもジェームズ優先だった
なんとなくわかってた
それが確信に変わったというだけ
僕は2人に悲しい顔をしてほしくなくて、気づかないふりをした
とぼけたように小首を傾げると、2人は安心したように微笑んだ
_
_
それから数年
ホグワーツ魔法魔術学校から、2人分の入学許可証が届いた
僕宛の手紙には、A・A様と書かれていた
これが僕の本当の名前
特に驚きもしなかった。
そこで初めて、父さんの口から僕が養子であったことを告げられた
とうの昔に気づいていたけど、2人があんまり悲しそうな顔をするもんだから、無理やり笑って気にしてないよと答えた
"僕"の1番はここにいる家族だった
でも僕は、誰の1番でもない
本当の母はもうこの世にいない
父親はどこにいるかすらわからない
ちっぽけな僕には、変えようのない事実だった
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三做村匡(プロフ) - めちゃくちゃ性癖にどストライクで大好きです……応援してます (2022年9月9日 10時) (
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年5月24日 19時
