89 _tell. ページ6
_ Remus side.
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閉じられた瞳から雫が溢れた
そのまま私の人差し指を伝って流れ落ちる
残念ながらここに憂いの篩はない
吐き出された断片と僅かに拾った記憶をつなぎ合わせることでしか、彼を知ることができない
"僕は君を傷つける"
まだ取り巻く環境を拒絶していたあの頃の自分と彼とが重なった
彼はまだ、あの頃の私と同じ場所を歩いている
ずっと避けて通ってた筈の道が突然目の前に現れて戸惑ってるだけだ
きっと向こうで、本当の父親に会ってしまったのだろう
世界とは狭い
そして残酷だ
あの頃の君は、どうやって私に手を差し伸べてくれていただろうか
2人とも不器用だったから、ジェームズが気を利かせてくれていたんだっけな
Aの兄弟だって知ったときはジェームズも吸血鬼なんじゃないかって思ったけど、それも見透かしたかのように彼が養子になった経緯を話してくれた
両親は不明で、ダンブルドアが連れてきたと
たったそれだけの情報だったけど、そのときは君について何でも知りたかった
満月の夜が明けるとどこからともなく現れて、身も心もズタボロになった私を助けに来てくれた君をはじめは天使かなにかだと思っていたのかもしれない
私が変身して君を傷つけても
私が狼人間であると知っても
変わらず側に居てくれた君は、どうやって私を励ましてくれた
「....A」
温度の低い彼の手をとる
一瞬怯えたように震えた手に指を絡ませて掌同士を緩く合わせる
「君は君だよ」
どこにも代わりはいない
どんな血が流れていても関係ない
「君が私に教えてくれたんだ」
気持ちが通じ合ったときは、それこそ人違いなんじゃないかって何度も考えた
人狼の身でありながら、身に余る幸せなのではと罪悪感まで感じていたものだ
今なら君の正体が悪魔だって言われても変わらず想い続ける自信がある
「Aじゃなきゃ駄目なんだ」
だからもうそれ以上、自分で自分を傷つけないで
いつの間にか開かれていた目蓋から紫の瞳が覗く
「...あんまり優しくしないでくれ」
「本心を伝えてるだけだ」
何か言い返そうとして言葉を探している
言葉にするのを諦めたのか、繋いだ手が緩く握り返された
「....リーマス」
「なんだい、A」
「....愛してる」
「知ってるよ」
なんとなく開心術は使いたくなくて、目を閉じてただ体温を感じた
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年1月10日 19時
