116 _eavesdropping. ページ33
_ Remus side.
_
別の階のどこかから、よく嗅ぎ慣れた甘い匂いが漂ってくる
モリーが来てから彼が厨房に立ったところを見たことがなかったが、何か作り始めたようだ
日刊予言者新聞を見て鬱々としていた気分が一気に晴れ渡る
気分転換も兼ねてAに会いに行こう、自分の中で即決された最優先事項だ
「トイレはそっちじゃないぞリーマス」
「ちょっと用事を思い出したんだ。
バスルームの場所ぐらいもう覚えたよ....」
新聞から目を離さずにシリウスに注意されたが、お門違いもいいところだ。
まったく失礼してしまう
匂いを辿って厨房の近くまで辿り着くと、誰かとお話し中のようだった
この元気いっぱいの感じは....彼女か
パチン
破裂音と共に、両サイドに双子が現れた
「こんなところにいいお客様が....！」
「今ならお試し価格で安くしとくよ？」
「心臓に悪いからやめてくれないか...」
割と長身な方の私と並ぶぐらいの双子に挟まれて軽く悲鳴を上げるところだった
「まぁそう言わずに...！」
「あそこの会話が気になるんだろ？」
「そんなときはコレ！」
「こいつがあれば盗み聞きなんて楽勝だ！」
テンポ良く謎商品を売り込まれている
伸び耳という名前らしいが、彼らがこれを持っていること自体とても恐ろしいことな気がした
この屋敷の形状なら伸び耳を使えばそれこそ盗み聞きなんて楽勝だ
大事な話をするときは気をつけなければいけないな
「セールスの腕は大したものだけど、
売り込む相手を間違えているよ」
「そうかい？」
「大事な人なんだろ？」
「気にならないの？」
「取られちゃうかもよ？」
彼との関係を公言したことはないが、やはりバレてしまうものなのだろうか
子供に気を使われて変な気分だ
「大事な人ってところは否定しないけど、
私にそいつは必要ないんだ。
聴力には自信があるからね」
「そいつは残念だ...」
「またの機会にご利用お待ちしてます」
そう言うと、また2人同時にどこかへと姿を眩ませて行った。
今度は厨房から追い出されたらしいトンクスが廊下で箒に躓いている。
顔を見に来たつもりだったけど、色々あってやはり大人しく待っていようかという気になり始めた
「いつまで突っ立ってんだそんなとこで」
「気づいてたのか....」
当の本人が厨房から顔を覗かせる
見つかってしまっては仕方ない
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作者名：yamanarashi | 作成日時：2021年1月10日 19時
