四日目 ページ4
少し距離を開けて並んで歩く私とAさん。
「花火までまだ時間あるみたいですけど､どうします？」
『とわこくんは回りたいところないの？』
「そうですね……金魚すくいとかどうですか？負けたらたこ焼きおごり。」
『よぉーし！其の勝負乗った！！』
勇気を出して金魚すくいに誘ってみたら見事に成功。
心の中で小さくガッツポーズをし､先に走りだしてしまったAさんを追いかけて空いている金魚すくいの屋台へ向かった。
『遅いよとわこくーん』
「勝手に走り出したのはAさんの方でしょ…」
『えー？そうだっけ？』
いたずらっ子みたいにくつくつと喉を鳴らして笑うAさんの姿もまた魅力的で､心臓がとくんと跳ねる。
あれ？私ってこんなにロマンチストでしたっけ。
『おりゃー！』
どこかで聞いたような夏ソングの様に､袖を濡らしながら金魚すくいに夢中になってるAさん。
「袖濡らしてますよAさん」
『あーありがとう。あ､そうだとわこくん』
「はいはいなんでしょう」
『もう私の負けでいいから黒金魚代わりに救ってあげて』
「は､はぁ…？わかりました？」
Aさんに頼まれて黒色の金魚を掬ってる私。
好きな人の笑顔のために必死こいて金魚を追っている私は､滑稽なようで少し楽しい。
「取れましたよ､黒金魚」
『おぉ！！ゲーム上手かったらこういうのも得意なんだね！』
「いや､そういうわけじゃないと思うんですけど…」
『ありがとう､とわこくん』
「いえーい､たこ焼きげっとー」
『ちぇー､しょうがないなぁ』
ふんわりと大好きな笑顔で笑いかけられ､再び心臓が跳ねる。
どくん、どくん、どくん。
「いいえ､どういたしまして」
にやけそうになる口元を必死に我慢し､捕まえた黒金魚を渡す。
『あっちー､』
「次どうします？」
『そろそろ時間みたいだからかき氷買ってよく見えそうなところ行こう？』
「そうですね､じゃあ行きましょか」
『ん。』
唐突に差し出された右手。
「なんですか？この手」
『ほら､花火近くなって人多くなってきたから。はぐれちゃ困るでしょ』
「そう､ですね」
汗でぐっしょりと濡れている左手をハンカチで拭ってから､Aさんの手を取る。
『あ､かき氷とわこくんのおごりね』
「ちょっとAさん！」
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作者名：cassis | 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月6日 4時
