幼馴染【我妻善逸】

幼馴染:伍 ページ5

冨岡side


『藤の花。お好きなんですか？』

「いや、別にさほど」

『あはは〜…じっと見てるから好きなのかと思いました』


一年前に藤の花が咲いた公園で、雪歩と初めて話した。

藤の花は見ていて心が浄化されるような気持ちになるから、たまに散歩やランニングや、

買い物のついでにベンチに座って見ていた。

でも、まさか中学生との会話のきっかけが藤の花になるとは思わなかった。


『藤の花言葉って「優しさ」「歓迎」なんですよ。』


教えられた時は、「どうでもいい」と思った。

だから


「はぁ、そうなのか」


と、返事したが


『あ、すみません！興味ないですよね！花言葉の本を見たときに、その花言葉と幼馴染が重なって、

つい覚えちゃって…。幼馴染、臆病でヘタレで弱虫で「死ぬ」が口癖で、頼りないんですけど、

世話がやける感じが可愛くて、臆病でもヘタレでも優しくて、

だから、私は善逸君が好きなんですよって…あ。』


コイツ馬鹿だ。自分で語り出して、顔を真っ赤にして照れている。

こんな変なやつだったから、気に入ったのかもしれない。藤の花も雪歩も。


「お前、名前はなんだ？？」


聞くとすぐに答えてくれた


『雪歩Aといいます。』


だから俺も名乗った


「俺は冨岡義勇だ」


でも、返ってきた反応につい首を傾げた


『あれ、その名前どこかで聞いたことある…。』


雪歩は少し考えると、思い出したように手をパンと叩いた


『高等部でスパルタだって有名な冨岡先生って冨岡義勇さんのことかっ！！』

「なんだ、スパルタで有名って」

『あっ、すみません』


出会いは藤の花。雪歩が来年高等部に上がって来ると聞いて、少し、こころなしか嬉しくなった。


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「我妻〜、藤って知ってるか？」

「お前俺のこと舐めてない？知ってる。公園でよく見るしな」

「冨岡義勇先生も知ってるよな？」

「うん、知ってる」

「冨岡先生、いつもは笑わないくせして、藤の花の話して笑ったんだよ」

「なにそれ、どういうことだ？」


「二組の体育の時に、


「初めての体育だから自己紹介をする。冨岡義勇だ。

藤の花言葉を知ってるか？「優しさ」「歓迎」だ。俺は藤の花が好きだ。以上」


って、藤の花の話するときに笑顔だったんだよ。

その笑顔のギャップで女子は冨岡先生にイチコロ。もう勘弁してほしいわ」


「へぇ、藤の花か」

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