終電 ページ15
.
午後８時過ぎの、所々に灯りがついている道を歩く
自分の履いているヒールの足音が、閑静な住宅地に響く
(ここを通るのは…………3回目か)
1回目は、酔った勢いで
2回目は、断れなくて
──────3回目は、自分の意思で
これだけ聞いても、馬鹿みたいに真冬にハマってしまっていることが分かる
こんなに好きなのに、一歩踏みしめる毎に心臓も合わせて速くなっていくというのに
私は…………一度、真冬を突き放してしまったんだ
「謝っても、許してもらえない………かな」
もしかしたら、もう真冬はこんな私のことを好きじゃないかも知れない
…………駄目だ、そんな事考えちゃ
“きっと待っててくれている”なんて自意識過剰かもしれないけど………彼方の話を聞いた限りは、まだ想われていると思う
その位、夢見てもいいよね
そしてやっと着いた、真冬のいるマンション
今までも少し速く波打っていた心臓が、ドクンと大きく脈を打つ
背中を押してもらったとはいえ、………怖い
拒絶されたらどうしよう、顔も見たくないなんて言われたら………私はもう、終わりだ
いつの間にか震えていた手を握りしめ、上を見上げる
(……………………行こう)
そう決心して、足を進めた
────────
とうとう着いてしまった、真冬の部屋の目の前に
深呼吸して、息を整える
大丈夫、………大丈夫
これまで散々傷付けてしまったんだから、真冬に突き放されたら大人しく身を引こう
そして……震える指先でインターホンを押した
『………はい』
インターホン越しに聞こえてきた声は、何だか心做しか前よりも元気がないように思えた
私はインターホンを見据えて、口を開いた
「…………………真冬、私です」
そして訪れた数秒間の沈黙
帰れって言われるかな、なんて後ろ向きに考えながら相手の返答を待っていると
『…………待って、開けるから』
「……………………え」
そして、中からドタドタと足音が聞こえたと思うと、勢いよく目の前の扉が開いた
“………本当に、Aなの………？”目を見開いてそう言った真冬に、私は薄く微笑んで
「…………………久しぶり、真冬」
“ちゃんと気持ちの整理付けてきたから”
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 795人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜宵依 - 凄く面白かったです！三角関係のところ感情移入しちゃって泣いちゃいました(´；ω；｀)主人公の先輩の言葉、過去に何があったのか気になります……！その先輩が主人公となる物語も見てみたいです……(👀)(図々しくてすみません) (5月8日 17時) (
レス) @page10 id: 4cf47a1a0b (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - きゃろっと。さん» 是非とも見させていただきます……！！！ お疲れ様でしたーとってもいい作品でした！！！ (2017年8月27日 10時) (レス) id: a3831c34f4 (このIDを非表示/違反報告)
そると - とても面白かったです(*´ω｀*) きゃろっと。さんの作品大好きです (2017年8月26日 22時) (レス) id: 679564457c (このIDを非表示/違反報告)
きゃろっと。(プロフ) - 三日月さん» 完結しちゃいました………(；＿；)新作も歌い手さんですよ〜、そちらも見て頂けると嬉しいです´ω`* (2017年8月26日 21時) (レス) id: ce4d5e16ec (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 完結しちゃった……(´；ω；｀) 新作も歌い手さんですか……？ あれれ涙が止まらない (2017年8月26日 20時) (レス) id: a3831c34f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きゃろっと。
| 作成日時：2017年8月21日 15時
