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宏太side
「ただいまー、」
光「お、おかえりー！」
リビングの扉からぴょこんと顔を出して出迎えてくれる、愛しい俺の奥さん。
八重歯がキラリと光を反射して、
それがまた可愛らしい。
「はい、これマヨネーズ。」
光「ありがと。あ、あとさ、雄也になんか食べれそうか聞いてきてくんない？」
「あいよー、」
光はそう軽く言うけど、
雄也が光に心を開かないことを、
きっと内心ではめっちゃ気にしてる、と思う。
でも、それは俺が弱かったせいで引き起こされた事態で。
俺が雄也のように強ければ、
いつまでもあいつを想っていられれば、
光にも、雄也にも、
こんな苦しい思いをさせることはなかった。
「雄也、入るぞー。」
雄「ん、とぉさ、…、」
目元は真っ赤。
多分泣いてたんだろう。
無理矢理にでも休めばよかったかもな。
「ごめん、起こしたか？」
雄「んーん、へいき…、」
身体を起こそうとする雄也を押し止めて、
そっと、目にかかった前髪を払ってやる。
額には、不格好に貼られた冷えピタ。
ベッドサイドにはちゃんと替えが置いてあったから、
一度剥がして、新しいのを貼ってやった。
気持ちよさげに目を細めた雄也。
もう大学生になった筈なのに、
その表情は幼くて、昔となにも変わらなかった。
「雄也、ごめんな…、」
雄「なんのこと？」
俺が弱かったせいで、
お前のお母さんを捨てて、
優しい光に逃げたこと。
雄也は必死に母親の死と向き合おうとしたのに、
俺はそれをやめた。
光と再婚すると雄也に伝えたとき以来ずっと、
雄也は俺に対して絶望してる。
永遠に俺は雄也に許されない。
それでも、甘えん坊な雄也は、
俺から離れることができない。
だから俺もそんな雄也に甘えて、
雄也の父親面をしている。
そんな矛盾を抱えた俺たちは、
いつだって心の奥に残る、
黒い靄には触れないでいる。
今の生活がそこそこ幸せで、
これ以上を望むとしたら、
その前に俺たちの関係は儚くも崩れさると、
お互いに知っているから。
「雄也、一緒に寝ようか。」
雄「かぜ、うつるよ…？」
「平気だって。」
ぬくい身体を抱き締めて、
とんとん、と背中を叩いていれば、
規則正しい呼吸が聞こえてきた。
重なる心音をなにとはなしに聞いていれば、
俺にも眠気がやって来て、
目を閉じればすぐに、
暖かな眠りが訪れた。
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作者名：KEI x他1人 | 作成日時：2020年9月4日 0時
