雄也の熱 ページ5
光side
「雄也、大丈夫か？」
ソファで丸くなってる雄也に声をかける。
うっすらと色づいた頬は、
凄い色気を醸し出していて、
病人なのは分かってるけど、
それでも見惚れてしまう。
雄「平気だよ、寝てれば治る、」
「こら、無理すんな。フラついてる、」
まるで私の元から逃げ出すように、
ふらふらと立ち上がって、
真横をすり抜けていった雄也。
手首をつかんでも、振り払われる。
二人だけの空間じゃ、
いつものことだけど。
「雄也…」
二階にある自室に行ってしまった雄也。
別に、反抗期とかな訳じゃない。
雄也は、兄弟のなかで唯一、
私の子どもじゃないから。
雄也は、宏太と、宏太の前の奥さんの子ども。
そして、雄也は未だに自分の"ママ"に囚われてる。
私を"母さん"と呼ぶことはあるけれど、
決して心を開いてはくれない。
このことを知ってるのは、
私と、宏太と、それから雄也だけだし、
雄也が望まない限り、
下の子達に話すつもりもない秘密。
普段の雄也は上手く立ち回ってるから、
バレるようなこともないと思う。
バレることでこの現状に変化が訪れてくれればいい、
そう考えることもない訳じゃないけど。
「冷えピタと、…朝ごはんあいつ全部食べてたよな、大丈夫か？」
不安になって、雄也の部屋に向かうと、
ベッドはもぬけの殻。
二階の突き当たりのトイレから水が流す音が聞こえてきて、
廊下に出れば、
胃を擦りながらこっちに向かってくる雄也。
この十数分で大分悪化してしまったらしく、
呼吸も荒いし、顔も真っ赤。
壁づたいになんとか歩いてるけど、
今にも倒れそうだし。
雄「…ごめん、全部吐いた、」
私に気づいて、
絞り出したような掠れた声で、
律儀に謝ってくる雄也。
目はあわないけど。
「別にいいけど、それより、冷えピタ持ってきたから、貼ってもいい？」
雄「自分で貼れるから…、」
冷えピタは受け取ってくれたけど、
広すぎるパーソナルスペースには入り込めない。
目の前でゆっくりと閉められていくドアを、
ただ立ち尽くして見つめるばかり。
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作者名：KEI x他1人 | 作成日時：2020年9月4日 0時
