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光side
「いいなぁ、」
心の中だけで呟いたはずの声は、
しっかりと空気を震わせていた。
二人の視線がいっきに私に突き刺さる。
「…ごめん、」
宏「そうやって遠慮すんなって、光。この際全部消化しとかないと、また面倒臭いことになるから、」
「いや、そんな大したことじゃないんだけど、本当に。ただ、そーやって、親子の絆見せられると、やっぱ私の入る隙間なんてないんだなって、」
「私はさ、雄也の母親になりたかったんだよ。」
宏太と結婚するってなって、
初めて雄也と会った病室で、
迷子みたいな顔をしてた。
精神を患っていた雄也は、
そのころ何をしててもほとんど意識がなくて、
だから私が誰だかなんてきっと分かってなかったと思うんだけど、
そっと手を握ったら、
ぎゅっと、握り返してくれた。
反射みたいな、そんなんじゃなくて、
意思がある強さで。
「その時、私が雄也を守ってあげなきゃ、って、そんなことを思ったんだよ。まぁ、結果は見ての通りだけどな、」
雄「…それを、なんで今さら俺に言うの、」
「…なんとなく、かな。」
雄「そんなこと言われた俺はどうすればいいの、」
「どうもしなくていいよ。本当に、優しいな、雄也は。」
雄「優しくなんか、」
「優しいよ。」
戸惑った顔をする雄也、
そして隣の宏太を順番に横目で見る。
宏太は今にも笑いだしそうなのを抑えてて、
ああ、これは成功するなって。
「雄也、」
両手を広げてみせた。
雄也の顔の戸惑いの色がより濃くなったけど、
そんなの気にせずにおいで、と言葉にする。
押しに弱いところがあるからな、雄也は。
「ほら、」
宏太に背を押されて、
もつれるように私の腕の中に収まった。
「これは私のエゴだけどさ、やっぱ私は雄也の母親になりたいんだよな。」
雄「でも、俺のママはママだけで、」
「でも、母親が一人じゃないといけない訳じゃないだろ？」
雄「それは、」
「私、今まで結構傷ついてきたんたけど？」
雄「…酷いよ、そんなこと言われたら、」
「大体うちの家系はしたたかな女が多いんだよ、」
雄「父さん、見る目ないんじゃない？」
宏「いやいや、そんなことないからな？」
ああ、ようやくだ。
なんとなくなしくずしにだけど、
家族になれた気がする。
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作者名：KEI x他1人 | 作成日時：2020年9月4日 0時
