めめさく短編2 (ページ21)

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これは本当、それは嘘。3 ページ21

「家族はみんな、食卓で仕事の話するから、子供には聞かせられないって、
　自分の部屋で、小さい頃から、いつも1人で食べてた。」

「......金持ちだからって、みんな幸せとは限らねーんだな。」

「学校では、いじめられてて。高校生までずーっと。」

「.....綺麗な顔してんのにな。」

「....綺麗？っ、やめてよ。俺お母さん似でさ。色も白いし、女みたいだなって、
男なのに気持ち悪いって、みんなに言われてた。」

「っ、......そか。」

「ね、名前は？なんていうの？」

「....蓮。」

「....れん。れん！俺はね？大介。あのおじいちゃんがつけたの。」

「.....だいすけ。外見に似合わない、男らしい名前だな。」

「俺ら、友達ね？俺の、初めての、友達。」

「......友達、か...」

なぜか俺は、初めての友達とやらに感情移入してしまい、
気づいたら、自分の小さい部屋に連れてきてしまっていた。
自分以外を入れたことなんて、もちろん初めてで。
他と組んで仕事をする時も、用心して、自宅を教えることなんてなかったのに。

「蓮、夜ご飯どうする？」

「適当に買ってくるわ。」

「俺、つくろっか？」

「へ？つくれんの？」

「う、うん、不味いかもだけど。」

＊

「ど、どうかな...一応、オムライスなんだけど....」

「味は薄いけど、うまい。」

「あ、ケチャップ足りなかったかも、持ってくる！」

「あ、いいよ、このままで、このまま食べる。」

「そう？ごめんね？俺、人に食べてもらったの、初めてだから。分かんなくて。」

「うん、俺も、誰かにつくってもらったのは、初めて。」

「.....そうなの？」

心を動かされてしまったのは、なんでなんだろう。
俺は、こいつと違って、家族なんて、最初からいない。
施設から引き取り手がなかった俺を、引き取って今の仕事を教えてくれた恩人は、昨年他界した。
母の味なんて、知らない。友達なんて、いないし、いらない。
誰かと一緒に、ゆっくりご飯を食べたことなんて、今まで一度もない。
別に、何とも思わなかったのに、今まで。

べつに、何とも.....

「っ、...ぅっ....」

「蓮？ごめん、やっぱ不味かった？ごめんごめん、泣くほど不味かったなんて、」

「....ちがっから、美味しい、ほんとに」

それから、『友達』との、奇妙な生活が始まった。