めめさく短編 (ページ11)

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mutual pining ＊両片想い＊ページ11

帰りのロケバスの中、
みんなは降りて、2人きり。

隣で、こくんこくんと揺れる
小さな頭に向かって、

俺は、
呟いてしまった＿＿＿＿＿。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「ありがと」

小さな、高い、掠れた声。

ギリギリ聞き取れた。

起きてたんだ。

答えが返ってくるとは
思ってなくて、
正直、ちょっと動揺した。

ありがと、って、
目を閉じたまま、微笑む佐久間くん。

覗きこむと、その顔が

幸せそうだったから、

ちょっと、期待してしまう。

いや、冷静になれば、
ありがとうなんて、
程よく断るための言葉で。

例えば、女の子が
興味ない男子から告白されたら、
ありがとう、て。

その後に、付き合えない理由なんかを
添えて、断る。

受験だから、
仕事が忙しいから、
好きな人が、いるから。

振られることを予感しながら聞く
ありがとう、て、残酷だよな。

じゃあ、俺らの場合は何だろ？

「ありがと」だけで終わりの場合。

好意へのお礼のみで、
その先はないのか、

それとも可能性があるのか。

そもそも、ありがと、だけでは、
告白してきた俺のことを
どう思ってんのか.......

.........情報がない。

俺の予感では、
間違いなく.......

俺は本気だった。

ずっと前から。

佐久間くんへの、好きが蓄積して、

ここ最近、何度も、
もうだめだ、と思った。

いつか言ってしまう。

迷惑をかけないようにしないと。
困らせてはいけない。

隣で揺れる、
佐久間くんの、ふわふわの髪。

寝る前に、毎日、思い出す笑顔。

頭では、ちゃんと考えてた、のに、

気付いたら、

言ってた。

「佐久間くん、好きだよ。」って。