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俺の初のミックステープのコンセプトが決まった。
憧憬、恋慕、苛立ちから沸々と沸きあがる血のような赤色、その輝きを放つ宝石。
曲調はそうだな......
初めはシアター調の正統派オーケストラがいい。
長調から短調への切り替えは伸びやかなストリングスが一変、トレモロで腹の底から滾るような劣情を表してからの、ロックだ。
「ウジさん、本当にこのコンセプトでいくんすか」
楽曲制作における頼れるヒョン達。
驚いた口ではそう言いつつも、俺が持ってきた提案に興奮してるような悪い顔。
事務所の期待も自分のイメージも振り切って好きなことができるこの機会。
サウンドや歌だけじゃない、俺の身体、財力、使えるもんは全部使う、妥協は一切なしだ。
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宿舎にも戻らず作業室にこもって曲を作る。
さすがに休まないと身が持たない。
深く眠らないように照明をつけたまま横になるが、瞼に流れる血が透けて見えて一向に眠れない。
赤に支配された脳が勝手にあの女を思い出して、創作欲求を駆り立てる。
最後はどう終わらせよう?
弄ぶようなジャズピアノでセクシーに仕上げようか。
いや、それだけじゃ足りない......そうだ!!
ソファーから飛び起きてPCの前に座る。
曲を作りながらこんなに興奮するのは初めてだ、俺はどうかしてる。
落ち着け落ち着け。
作業室にある飲み物専用の冷蔵庫にぎっしり陳列されたゼロコーラの缶を取り出すが、
クソっ、これも赤じゃねぇか。
250mlを一気に飲み干し、その赤い缶を踏み潰した。
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作者名:SALAN | 作成日時:2022年3月2日 10時