シガーキスはあなたと

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後日、外回り前にユン先輩とここに来た時は、もうそのライターはなかった。

「ユン先輩、紙煙草は辞めたんですね」

「まあねぇ。せめてマシなもんにしようって思ってさ。お前は吸わねぇの？」

「もう辞めてて」

「まじで？どうやって？」

「しばらく量を減らしたら意外と平気だったんです。それで、一本だけ残して、これ吸ったらもう吸えないって思ってライターも捨てて我慢してたら、辞めれました。」

「その一本は？」

「まだ持ってます」

先輩は意外にも禁煙に前向きで、私の話を感心して聞いてくれてるかと思ったら......

「お前らしい禁煙方法」

「どの辺がですか？」

「完成しない限り壊れることもない」


出た、天使の名言だよ。


透視の能力でもあるんだろうか？
この人が言うことはいつだって妙に核心をついてる。
でも私はその核心から目を逸らす。

ふと、先輩が首から下げる社員証が目に入る。
ユンジョンハン、小さな証明写真でもわかる綺麗な顔と澄んだ二つの瞳。
こんな素敵な先輩でもうまくいかないことがある。


「俺も辞めたいけどiQOS買っちゃったしなぁ」

「辞めれないやつですね」

ははっ、と軽く笑った先輩が

「でも、なんか違うんだよな......」

って、切なそうな表情をしたのを見逃せなかった。


「先輩、まだ恋してるんでしょ」

「ん〜」


愛嬌の混じった曖昧な返事をして白い煙を吐き続ける先輩に、どうか幸あれと願った。

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