シガーキスはあなたと (ページ31)

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ミンギュside ページ31

「疲れた、それ頂戴」

さっきまで俺が吸っていた煙草が彼女の綺麗な指に挟まっている。

それ俺のなんだけどな......。

「私のと一緒じゃないの」

真似して煙草を吸うようになった俺に、彼女が面倒そうな顔をしてたのも少し前のこと。

「......虚しさに耐えられなくなってさ」

そのせいで俺、喫煙者になっちゃった訳だし。

始まりは俺の勘違いだった。
一緒に店やろうって言われた時は嬉しかったし。

二人で店を経営するなんて、俺らはある意味運命共同体だ。
一緒に物件見たり、内装考えたり、レシピを作ったり......。
俺らはまるで夫婦みたいで、これから先付き合って、本当に結婚だってするかもしれないって思ってたのにさ。

ずっと思い続けてる人がいるとは知らなかった。

「で、ヌナ、今日はどうする？」

俺を受け入れたって、俺を選んだわけじゃない。

長い長い追いかけっこの途中、どこか休める場所が欲しかったんだろ。

それでもいい。
たっぷり休ませた後、あんたを攫ってしまえるなら。

「......ん」

近付く唇を甘んじて受け入れて、傷心につけ込む悪い男に何度なってやっても、俺の好意が受け止めてもらえる隙なんて1ミリも無かった。

ーー先のことなんて心配する前にその人が好きで、欲しくて仕方ない......。
ーーそんで付き合っても相手をもっと好きになる。

人にしたアドバイスの言葉は、自分には何の効力もない。
Aさんごめん。

「好き」よりも「執着」に近いこの感情は、あまり長く持っているのは疲れるから、

「ヌナ、好き。そろそろ付き合ってよ」

そう言って、頭では全く別のことを考えてる。

俺もあんたも、そろそろ潮時だな。

彼女の手が首の後ろに回され、もどかしくキスをする間、その指に挟まれた煙草が音もなく消えた。