シガーキスはあなたと (ページ29)

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「んんん！この抹茶のティラミスも最高！！美味しい......♡」

結局、前菜からデザートまでフルコースを堪能した私の口からは賞賛の言葉しか出てこなかった。

「Aさん美味しいしか言ってないじゃん、それじゃ参考にならないんだけど？」
「だって美味しいから」
「じゃあ、来月のコースメニューはこれで決まりだな」

少量ずつ皿に取り分けて出されたのは春をイメージしたコース料理で、実際は器や盛り付けにもこだわる予定なのだとか。
食材はこれから旬を迎えるし、もっと美味しくなるんだろう。

食後、店の裏手で2人で煙草を味わう。

狭い路地に西日が差し込み、なんとなくもう帰らなきゃな......という気持ちになる。
幼い頃に暗くなる前に急いでお家に帰った時のように。

「また来月、今度はお金払って食べに来なきゃね。ミンギュの作る料理好きだぁ」

無意識に出た「好き」という言葉。

「そうやって素直に言えばいいじゃん。Aさん、ちゃんと好きって言えるんだから」

あぁ......
ある時はこんな簡単に言えてしまうのに、誰に対して、何に対して言うかによってはなかなか素直に言えないものだ。

急にさっきの話題に戻って、気持ち数ミリだけ気分が沈む。

「怖いんだよね。私が気持ちを伝えれば、多分私たち付き合うよ。でも、ミョンホの恋愛遍歴すごいでしょ？今までの人みたいに私もすぐ別れちゃうんじゃないかって......」

そう伝えるとミンギュは、それはミョンホが悪いなって笑った。

「でもさ、さっき言ってた"これ以上好きになれない"っていうのは分からんかな。付き合ったその先のことなんて心配する暇もなくその人が好きで、欲しくて仕方ない......。そんで付き合っても相手をもっと好きになる」

俺はそういう気持ちしか分からない。

そう言うミンギュに想いを寄せられる人はきっと幸せだ。

そして、ミョンホも同じように私を想ってくれてるのかもしれない。

「付き合った後も、ずっと好きでいれるの？」
「それが本当に好きなんだって」

何を怖がっているんだろう、
私が自分に自信が無いだけなんだ。
それでずっと避けてたら、本当にあの人を逃してしまう。

ちゃんと応えなきゃ、向き合おう。