シガーキスはあなたと (ページ23)

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先方の前でのミョンホは本当にデキる営業マンの鑑で、営業感ゼロのまま商談を終えた。

「すげぇ......」

顔のいい営業マンの皆さんすみません。
顔がいいから契約取れてるのか？なんて僻んでてすみません。

今日のミョンホの対応を見てたら、事前準備、先方のニーズを聞き出す傾聴力、ニーズに合った提案の的確さなど、実に見事だった。

私が口を開いたのは挨拶だけ。

先方も一旦は上に報告してから答えを出すとの事だから即決ではなかったが、期日まで決めてほぼ見込みは固まった。

いつもは味わえないほっとした気持ちで社用車に戻る。

「ミョンホはすごいよね......」
「ははっ、前も同じこと言われた」

あの時も車の中だったと思いつつ、時計を確認する。
時刻は午後6時40分、今から会社に戻れば確実に定時は過ぎるだろうな。

『お疲れ様です。はい、問題なく終わりました。もう1箇所訪問できそうなところあるんですが......はい、承知しました。お疲れ様です』

報告の電話を終えたミョンホ。

「直帰でいいってさ」
「おっけ。次どこ行く？予定になかったけど......」
「行かないよ、あれ嘘」

な〜んだ、早く帰りたいだけの嘘か。

正直、私はミョンホと一緒に居られるならあと何箇所でも訪問したいくらいだけど、恋人持ちは違うよね。

「彼女とのデートに遅れちゃいけないもんね」

わざわざ“彼女”なんて言葉使うのは自分への当て付けみたいて苦しくなるだけなのに。

「そうだね、遅れちゃいけない」

当然肯定するミョンホに心臓がまた温度を無くすのに。

「A、この後のご予定は？」
「喧嘩売ってます？何もないです」
「じゃあ一緒に来てほしい」

デートなんでしょ？
なんで私を連れ回すのさ？
あれか、女目線でプレゼント選んでってか？
何もこんなギリギリじゃなくていいじゃん。

複雑だなぁ......

それでも、まだ一緒に居られるのが嬉しくて付いていってしまう私も大概だ。