シガーキスはあなたと (ページ21)

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21（ミョンホside）ページ21

「ん......はぁ...ミョンホっ」

首に手を回し、俺の唇を必死に受け止めるA。
その目に溜まった涙は苦しさから？
それとも気持ちいいの？

どちらにしろ可愛い、綺麗だ。

「好きだよ、Aっ......」

この瞬間がずっと続けばいい。
永遠に、目の前にいる彼女を求めていたかった......

ーーガチャ

バスルームの扉が開く音で意識が現実に戻る。

鼻を掠めるソープの香り。

まただ......

何度回想したかわからない、事実と妄想が混ざり合って、もうどこまでが本当だったか分からなくなった記憶。

あの貪るようなキスの感触だって、リアルに思い出そうとしても思い出せない。

はっきり覚えているのは、白くなる遠くの空と、煙を吐く彼女の後ろ姿の一枚絵。

俺はそれを車内から鑑賞していたこと。

泣き腫らした目をした彼女が咥える煙草を、「もうそれ辞めろよ」と奪い取れなかったのも、
砂浜に降りる彼女を引き止められなかったのも、
形ばかりの恋人がいる後ろめたさからだった。

あの時は、ただ悔しかった。

それで「変わらなきゃ」と思ったのに、
結局は何も変えられずに甘えてしまった。

Aの好意に気づいてしまったから。

ーーパタン

シャワーを終えたソクミンは何も言わず寝室に消えた。
「使って良いぞ」ってことだから俺も勝手にシャワーを浴び、ソクミンのベッドに入り込む。

背中越しに感じる、学生時代から変わらない温もりに安心する。
そして、何の飾り気もない心になれる。

「...ソクミナ、俺も、そろそろ本当に頑張るわ」

もぞもぞと布団の中が動き、ソクミンがこちらに寝返りをうった。

「Aのこと？」

Aが好きだなんて言ったことなかったんだけど......
なんだかんだこの人は周りをよく見てる。

「うん」

「...そっか、頑張ろうな」

形の良い手が伸びてきて、俺の髪をわしゃわしゃと撫でる。
ソクミンの手癖のようなもの。

外ではうるさくて世話の焼ける同期だけど、俺より長く生きてる分やっぱり彼は兄だ。

「ヒョン、コマウォ......」

じわじわと眠くなってくる。

ソクミンの温もりと眠りにつく直前、俺は決意した。

終わりが近い、俺の恋愛とも呼びがたい恋愛、
どうせ終わるなら今回くらい俺から終止符を打とう。

そして向き合おう、最愛に。