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さっきの潤くんからの投げ掛けに対して「イケメンはずっとイケメンだなぁって」とよく分からない返しをした智くんに「ちょっと意味分かんないっす」と透かさず返す潤くんは相変わらずドライな対応。
そんな潤くんに反して、智くんはふにゃふにゃ笑っているし、やっぱりマイナスイオンが溢れ出てる。
「生ビールと焼き鳥五種盛りお願いします」
「はいよー」
潤くんが智くんに注文しているのを横目に見ながら、「ねえ智くん、私にも同じのお願い」と言えば、「ビールは一杯だけだからね？」と言う智くんは今日も私に甘い。
あげない、と言いながらも何だかんだ私の我が儘を受け入れてくれる。
「…で、俺のせいで病んでると？」
ネクタイを緩めながら潤くんが横目で私を見る。
ネクタイを緩める仕草は、いくら見慣れた潤くんがやってもかっこいい、と毎度思ってしまうから、きっと翔さんがその仕草をしたらあり得ないほどドキドキしちゃうんだろうなぁ。
…ああもう無意識のうちに翔さんのこと考えてるじゃん。
この感情を「恋」だと認めてしまったけれど、翔さんが私のことを好きになる可能性は低い。
むしろゼロに近い。
だから「恋」がこれ以上膨らむ前に諦めた方がいい。トラウマを乗り越える自信は持てない。
だって、絶望的に不利な状況だし。優しい翔さんは私の好意をきっと無下に出来なくて、逆にもっと好きを加速させて行くんだ。
そんなの、ダメだ。また同じことの繰り返しになってしまう。
忘れられなくて、ずっと縛られたまま、恋に臆病になる。
そんなの、私が苦しいだけだよ。
「潤くんのせいじゃないよ」
「今日は俺の奢りで許せ」
「え、奢ってくれるの？」
「掘り返してごめんの償いになればな」
「許す」
即答した私を見て「チョロいなお前」と潤くんに少し笑われた。
確かにチョロいかも。でも根本として潤くんのせいじゃないし。
だけど、このまま一生忘れられないまま、心から好きになる相手が出来ても、誰とも付き合えないのかなぁ…
なんて私らしくないほど病んでいるのは確かだし。そのキッカケになったのは潤くんの言葉。
だからやっぱり潤くんのせいだと思う。
「そういやA。お前再来週の日曜誕生日だろ？何か予定ある？」
「ないよ。って寂しいなぁ私(笑)」
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年12月2日 19時
