cara-spin off- (ページ1)

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＃The beginning of the journey ページ1

今シーズンも全力で駆け抜けた1年だった。

天皇杯を優勝で締めくくり、そのまま束の間のオフシーズンに入った。

去年から正式にA代表での活動も始まって普段の休みが不規則な分、オフシーズンに長期休暇を取れるようにクラブが調整してくれている。

「絶対こっちの方がいいやろ」

「いやいやもっと派手に行かないと！A、絶対こっちの色の方がいいって！」

「それはないわー」

目の前には沢山のスーツケースとスターオーラ全開の大男3人。

香川さんと佑都くん、という私たちの世代にとってはヒーロー以上にヒーローの2人。なぜこのビックスターと一緒にいるかと言うと、佑都くん主催の“長友会”に呼んでいただいたのだ。

まさかの香川さんもいるというサプライズ。最初はガチガチに緊張していたけど、スーツケースを前に2人で小競り合いを始めるもんだからもう親戚のお兄ちゃんに思えてきた。

「Aちゃん、こっちの色似合いそうだけどね」

そして、推し。サコくん。

まだオフに入って日も経っていないのに、こんなに一気に仲良くなれるとは思って無かった。当時の私が見たらびっくりしすぎて心臓止まっちゃうかも。

さこくん、なんて呼ぶのもまだ照れくさいのに、サコくんは当たり前のように“Aちゃん”って呼ぶからドキドキしすぎて心拍数上がっちゃう。

シーズン中は他のチームの選手たちとプライベートでも関わることは少ないから、いくら推しでも仕事上は何とも思わないけど。やっぱりプライベートで見ると、背も大きくて金髪が映えててかっこいい。ああ、かっこいいよう。

「わ、かわいい！じゃあこの色にします！」

「おい、結局サコかよ！」

「出た出たーヒイキデスヨー」

サコくんが選んでくれた淡いピンク色のスーツケース。

この度、ヨーロッパへの旅行が決まった話を佑都くんに報告すると、スーツケース買いに行こう！と早めに集まった香川さんとサコくんも着いて来てくれた。

どうせ買うならいいやつにしなさい、と。値段を見るのはちょっと戸惑ったけど、これにします！と店員さんに声をかける。

「お会計の準備をしてまいりますので、こちらに掛けてお待ちください」

「はい、」

いかにも座り心地が良さそうなフカフカのソファに腰掛ける。

カバンの中から財布を出そうとゴソゴソしていると、綺麗にラッピングされたスーツケースを店員さんに渡された。