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『ごめんなさいっ、本当にごめんなさいっ!』
岳「椎名、」
『本当にごめんなさいっ、もう迷惑かけないから、だから許してよっ...!』
岳「椎名、顔上げて、」
『ごめんなさいっ.....ごめんなさい........っ、』
岳「椎名ってば、」
もうあんな思いしたくないの。
辛くて悲しくて、怖くて。あんな思い二度としたくないの。
バスケなんてやらなければよかった。
私がバスケをしなければ、
私がいなければ、
『お願いだから許してっ、もうバスケしないからっ.......!』
お願いだから
嫌いにならないで、
岳「おい!!椎名A!!」
荒げた声と痛いほど強く掴まれる肩。
はっとして顔を上げると目の前の柴崎は怒気を含んだ瞳で私を見つめていた。
岳「椎名、おまえどこ見てんだよ、」
『.....え?』
その怒りを含む瞳とは正反対の優しい声。肩を掴んでいた手がそっと涙を掬う。
岳「なんで過去見るんだよ。今おまえの前にいるのは誰?今おまえの隣にいるのは誰?ちゃんと俺らのこと見てよ。」
だんだんと優しくなる目の前の瞳。横では恵梨香と翔平が背中を撫でてくれる。
岳「後ろ向いて嘆いて、自分に嘘つくなよ。
椎名今日ずっと楽しそうだったじゃん。それなのに、もうバスケやらないの?」
『....っやらない。もう、バスケしたくないっ、』
岳「嘘つくな。バスケ好きなんだろ?」
バスケを嫌いになんてなれるはずない。
あのボールの感触が、ゴールした時の音が、みんなと抱き合って喜ぶあたたかさが、歓声の聞こえるあの空気が、
私は大好きなんだ。
『でも、私バスケしちゃいけないのっ、バスケしたらみんなに嫌われちゃうっ、』
岳「馬鹿、嫌いになるわけないだろ。」
涙を拭うしなやかな指と頬を撫でる大きな手。
岳「おまえに文句言うやつがいるなら俺がぶっ飛ばしてやるから。言っただろ、守ってやるって。
だから、バスケしないなんて言うなよ。
俺が、俺ら3人がいるから。ずっと椎名といるから。」
どうして柴崎の声はこんなにも頭の中に響くんだろう。
どうして身体中に沁み渡ってこんなにも身体を熱くさせるんだろう。
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作者名:Pin | 作成日時:2016年1月27日 23時