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電気の点いている化学室から聞こえたのは複数の人の声。
ドアが閉まっているから顔は分からないけど、顔なんて見なくても分かる。



「光くんを巻き込んで何をするつもりだったの?」


突き刺すような圭人の声。
授業では絶対に聞く事のない、冷たい声。


今すぐにこの扉を開けたかった。
あの夜、圭人と知念が何を話していたのか。
その答えがここで解けるような気がして。


だけどそれを踏みとどまったのは、ここで扉を開けてしまったらそこで全てが終わってしまうような気がしたから。



「今さら?」


圭人の質問に答えたのは、他でもない薮ちゃんだった。
何の話をしているのか、俺には分からなかった。
高鳴る心臓の音が、廊下中に響き渡っているように感じてしまう。
このまま中までこの鼓動が聞こえたらどうしよう。



「本当は光くんの口から伊野尾ちゃんの名前が出てきた時点で気付いてた。」

「見逃したんだ?」


追い詰めるように言う薮ちゃんの声も、いつも俺たちに掛けてくれる優しいものではなくて。
威嚇、攻撃。
とにかく相手を突き放すような、そんな冷たいトーンの声。


「いや、そもそも光くんの転校が決まった時点で気付かなきゃダメだったんだ。」


怒りなのか悲しみなのか、表情は見えないけれどその声は震えていた。
普段はおっとりしている圭人の声だとは思えなかったけれど、あの夜があってから信じざるを得ない状況だ。


その途端、男性にしては少し高めの特徴的な笑い声が響いた。


「俺も焦らなかったと言えば嘘になるけど、こんなにスムーズに行くとも思ってなくてさ!」


その声は伊野尾さんのもので、彼の笑い声が耳からしばらく離れなかった。
恐らく室内に居るのは、圭人と薮ちゃん、それから伊野尾さんの三人だ。


「あの夜、光くん達が学校に忍び込んだときがチャンスだって思ってた。知念から連絡もらってたから。」

「知念も『そっち側』だっけ。まさか俺が担任をすることになるとは思ってもなかったけど。」

「薮ちゃん、あの夜もしも俺よりも先にあの子達を見つけていたらどうしてた?」

「…さぁ?その時にならなきゃ分かんないでしょ、そんなの。でも化学教師が化学室を使う事はおかしなことじゃないし、その辺は上手く誤魔化せただろうけどね。」



三人が何の話をしているのか、まったく分からなかった。
もちろんその場を離れようという気もなくて、更に耳を澄ませた。

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天凪(プロフ) - Naraさん» お返事が遅くなりました…!そう思って頂けたなら嬉しいです!温かいコメントありがとうございます! (2017年11月26日 16時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
Nara(プロフ) - すごく良いお話ですね 読みながらその世界に入って行っちゃって(苦笑) すっごく泣けました (2017年11月19日 11時) (レス) id: 6028a802df (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» 最後までお付き合い本当にありがとうございました!いつもいつも温かい応援をしてくださるので、とても励みになっています!過去作も読んでいただけるなんて…!本当に嬉しい限りです! (2017年8月30日 22時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 完結おめでとうございます!とても続きが気になり、ワクワクしながら最後まで読ませていただきました!過去作で見てないものが3つあったので、これから読もうと思います!!! (2017年8月29日 22時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» ありがとうございます!ラストスパートになるかと思いますので、これからも頑張ります!更新速度も是非上げていきたいです!最後まで応援よろしくお願いします! (2017年5月29日 16時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年5月7日 17時

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