kickoff03 ページ22
side 涼介
「練習、したのにな…。」
「だからこそじゃない?」
空は今までに見たことのないくらいに澄んでいた。
それなのに心のモヤモヤは晴れてくれはしなかった。
隣には大ちゃんがいて、バシッと背中を叩いてくれた。
「相手は強豪…負けるのは仕方ないことだよ。」
「そんな、言い方…まるで最初から負けるみたいな言い方しなくても…!」
「そうじゃない!」
めったに聞かないその大きな声に言葉を失ってしまう。
その目は揺らぐことなくまっすぐに俺を見つめて、その奥には俺も見たことのない感情が宿っていた。
「俺だって悔しいよ、でもそうじゃない。強豪相手にここまで出来たんだ、悔いなんかない。」
そうでしょ?と言いたげな瞳で大ちゃんは笑った。
そうか、大ちゃんの心は晴れているんだ。
負けても満足の出来ることもある。
それが決して勝ちではなくても。
「大ちゃんは、強いね。」
「えっ?」
「戻ろう。みんなが待ってる。」
・
・
負けたことが悔しくて。
でも負けがすべての終わりじゃないことを学ぶことができて。
試合が終わってからは練習は基礎トレーニングが中心になる。
部活も今までよりは楽になるだろう。
けれど明日の教室にも知念や光くんはいないのだろうか。
薮ちゃんはもう教室には居ない。
寂しいと言えば当然だし、そうじゃないと言われても納得できてしまう自分が居る。
自分の身の回りで何が起きているのか分からない。
でも大切な友達が何かに巻き込まれているのは事実だ。
それを助けてあげられるかどうか分からないけれど。
それでも友達を助けてあげたいなんて当たり前の感情、どうして無視できるのだろう。
連絡が無駄なことも知っている。
後の手がかりになるのは、圭人と雄也だ。
もしも二人がみんなみたいに行方をくらませてしまう前に。
早速スマートフォンを起動させてチャットを開く。
最終の履歴がもう随分前になっているであろう、雄也のトークルームを開く。
『明日の昼休みに時間もらえないかな?どうしても確認したいことがあって。』
これで大丈夫だろうか。
内容はあえて隠さないと、逃げられてしまうだろうか。
けれど正直に全部打ち明けないと…。
ぐるぐると色んな感情が渦巻くが、悩んでいる暇はないと送信ボタンを押す。
104人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天凪(プロフ) - Naraさん» お返事が遅くなりました…!そう思って頂けたなら嬉しいです!温かいコメントありがとうございます! (2017年11月26日 16時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
Nara(プロフ) - すごく良いお話ですね 読みながらその世界に入って行っちゃって(苦笑) すっごく泣けました (2017年11月19日 11時) (レス) id: 6028a802df (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» 最後までお付き合い本当にありがとうございました!いつもいつも温かい応援をしてくださるので、とても励みになっています!過去作も読んでいただけるなんて…!本当に嬉しい限りです! (2017年8月30日 22時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 完結おめでとうございます!とても続きが気になり、ワクワクしながら最後まで読ませていただきました!過去作で見てないものが3つあったので、これから読もうと思います!!! (2017年8月29日 22時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» ありがとうございます!ラストスパートになるかと思いますので、これからも頑張ります!更新速度も是非上げていきたいです!最後まで応援よろしくお願いします! (2017年5月29日 16時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ