招待の先にあるもの ページ10
さらに1週間がすぎた頃、ポストに一通の封筒が入っていた。
差出人は書いていなかったけれど、きっと照史だ。何故だかそう思えて仕方がなかった。
手紙で謝ろうってことなのかな、それとも…。
少し緊張しながら丁寧に封を開けると、1枚のメモとコンサートのチケットが入っていた。
『忙しいかもしらんけど、絶対きて欲しい。コンサート終わったら話あるから空けといて。終演2時間後に家に行く。照史』
なによこれ、謝罪の言葉もなく勝手に予定入れて…。ブツブツ言いながらもスケジュールを確認すると、その日は午後から会議、夜は彼が家に来ることになっていた。
まぁ会議は開場までには終わるだろうけど、彼との約束は…。
お互いに忙しいから、彼と会うのも2週間に1回とか1ヶ月に1回とか、遠距離カップル並みの頻度でしか会えていない。
それでも淋しさを感じることはなくて、やっぱり長い付き合いの間に築かれた信頼関係の賜物だと思う。
でもさすがに、彼を拒絶してから初めての約束を断るのは勇気がいる。
あの時も気分が悪いという私の訴えをわかってくれるどころか心配してくれた彼…。なにひとつの疑問も抱かずに。
でもきっとこのまま彼に会っても同じことになるだろう。照史のことが解決しない限り、彼に対しても無駄な嫌悪感が起こってしまう気がする。
彼に予定変更の連絡をしてスケジュールを書き換えた。コンサートに行くことへのドキドキなのか、照史に会うことへのドキドキなのか、胸の鼓動が早くなった理由は考えないことにした。
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作者名:たんかん | 作成日時:2017年2月23日 19時