ムードは無くとも:TO ページ36
雨が降る中ボーッと橋から川を見ていた。いや、見ていたという表現は的確ではないかもしれない。川が視野に入っていたとでも言おうか。3ヶ月付き合った彼氏から｢お前は色気が無さすぎて妹にしか見えない｣とフラれた。この別れ文句、産まれてから6.7回ほど聞いたかと思うと私はどうにもガキっぽいらしい。
雨に打たれてる今だけは泣いていいだろうと涙腺を緩ませた瞬間、雨が止んだ。なんでこんなバッドタイミングで...と顔を上げると私の頭上には傘が1つ。振り返ると懐かしい顔した彼が居た。
ト｢こんなとこで何してんの？風邪引くぞ？｣
『...別に』
ト｢大学の飲み会ぶり？｣
『...うん』
ト｢...飯でも行かね？｣
『...行く』
何も聞かず私の隣を歩きながら彼はやかましい程に話し掛けてくる。私はうんうんと頷くだけで答えなければいけない質問なんかはしてこない。彼の話をただ聞くだけのやり取りがとても心地よかった。
何だか薄暗い飲食店に入り、半個室のような席に落ち着くと目の前に座った彼は私の顔におしぼりを投げた。
『わっ！何すんの！』
ト｢雨で顔ぐちゃぐちゃだから抑えとけば？｣
暖かいおしぼりを目元に当て、下を向いて黙っていると頭にぽんと大きい手が乗っかった。
ト｢おつかれ｣
ただそれだけの一言で堰を切ったように涙が溢れ出してきた。ぐすんぐすんと泣く私の頭をゆったり撫でながら、落ち着くまで待ってくれた。
『ん、ごめん...』
ト｢落ち着いた？｣
『落ち着かんもん！色気がねぇとか知らんし！！』
ト｢おーおー、鼻水出てっから笑｣
彼の手元にあったおしぼりで鼻を拭かれる始末。そうか、こういうとこか...
『どうせ妹扱いするなら彼女にすんなよ...』
ト｢別に妹扱いされてもいいじゃん？それがAのいい所だし。｣
『違うの！ムードが無いとか言うの！！色気も無い、ムードも無い、おまけに胸もない！悲しすぎ。病みそう。』
ト｢ははっ、まぁ酒でも飲めば？笑｣
勧められるままお酒を飲み、飲んで飲んで、気付いたら私はベッドに横になっていた。
『んん...？』
ト｢はよ、気持ち悪くない？｣
『ここどこ...？』
ト｢らぶほ｣
まさかの言葉に飛び起きると私はきちんと服を着てる。慌てた私を見て彼は死ぬほど笑って言った。
ト｢俺本命にはすぐ手出さんのよ｣
『本命...？』
ト｢妹じゃなくて女として見てるって意味｣
真っ赤になる私を見て彼は嬉しそうに微笑んだ。
ムードは無くとも愛はあるんです
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ぴあ(プロフ) - 海月さん» いつもありがとう海月 (2020年3月11日 8時) (
レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - Lizさん» ありがとうございます！読み返して頂けるのは本当に作者としてありがたい限りです。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 時雨さん» 占ツクでもTwitterでもありがとうございます。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 珊瑚樹茄子さん» いつもいつも心温まるコメントを頂けて本当に糧になりました。ありがとうございます！ (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - なぁさん» ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴあ
| 作成日時：2019年5月29日 13時
