Lilac:KA ページ28
※死ネタです。
『寛太くん』
カ「なんですか?」
『もし私が死んだら、ライラックの花を手向けて欲しい』
カ「なんでですか?笑」
『若き日の思い出って花言葉。寛太くんにライラック貰いたいんだよね。』
俺にそう言った彼女は1つ上の先輩。そして俺の好きな人。彼女は今の時代に合わない真面目で誠実な女性だった。周りの人は皆彼女の事を″損する善人″だと口を揃えて言う、そんな人だ。
俺は今そんな彼女の通夜に来ていた。
彼女はいつものように仕事に行き、帰りに交通事故で亡くなったらしい。呆気ない。フラグを回収するのがあまりにも早すぎる。
ト「カンタ...大丈夫か?」
カ「...別に大丈夫」
透明な板越しに見える彼女の頬は不自然な程の化粧が施されてる。これ以上見ていられなくて後ろ髪引かれる思いで葬儀場を後にした。
帰り道ふと見た花屋さんにライラックが風に揺れていた。何も考えずにライラックを手に取ると女性の店員さんが寄ってくる。
「ライラック、今が季節なんですよ!」
カ「ここ...にあるライラック全部下さい...」
ト「は...?」
「はい、かしこまりました。どなたかにプレゼントですか?」
カ「...好きな人に」
「お兄さん花言葉知ってらっしゃるんですね?」
珍しいな〜と微笑んだ店員さんに疑問が浮かぶ。なんで花言葉と繋がった?
カ「...あの、」
「はい?」
カ「これって若き日の思い出って花言葉ですよね?」
「そうですよ!あとは、愛の芽生えって意味もありますね。ご存知無かったですか?」
偶然かもしれない、それでも彼女が俺に手向けて欲しいと頼んだ花にそんな花言葉があれば自惚れるじゃないか。渡された花束を腕に抱えて歩き出すとトミーが俺にハンカチをくれた。
ト「Aさん、花屋になりたかったって言ってたから多分もう1つの花言葉も知ってたぞ。」
カ「っ、なんで、今更...」
ト「カンタ...今ならまだ間に合うから、行ってこい。」
聞き終わる前に走り出した俺は先程の道を駆け抜ける。式場に戻ると彼女の両親に頭を下げて何とか顔を合わせさせてもらった。さっきとは違う、ケースに入っていない彼女の手に触れると涙が溢れて止まらない。
そっと彼女の隣にライラックを手向けると、言えなかった言葉を吐き出した。
カ「Aさん...ずっと、好きでした...」
それからも世界は変わらず回る。今日も俺は花屋に寄り道だ。
カ「すみません、このライラック下さい」
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ぴあ(プロフ) - 海月さん» いつもありがとう海月 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - Lizさん» ありがとうございます!読み返して頂けるのは本当に作者としてありがたい限りです。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 時雨さん» 占ツクでもTwitterでもありがとうございます。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 珊瑚樹茄子さん» いつもいつも心温まるコメントを頂けて本当に糧になりました。ありがとうございます! (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - なぁさん» ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします! (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴあ | 作成日時:2019年5月29日 13時