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不器用なお前と俺:TO ページ20

『とも、駅前の焼き鳥屋。』

ト「は?なに?」

『30分後集合、じゃ。』


耳元に押し付けられた携帯からは無情にもツーっと通話の終わった音が聞こえてくる。急にAから電話が掛かってきたと思えば乱雑な飲み会の誘い。断る暇も与えず切るのがあいつの癖。どうしても無理な時はメッセージで″ごめん行けない″と送るのだが、なんだか無性にムカついた俺は″行けない″とだけメッセージを送った。勿論行けない訳では無い。ただいつもいつも振り回されてるようでムカついた。

そもそもどうしてAはこんなにも横暴なんだ?学部が一緒であいつの元カレが俺のダチだった。彼曰く「心が無い女」らしい。意識しなくていいあいつの隣が心地好くて、いつの間にか飲み友になってた。

2時間経ってふと自分が大人げなかった事に気付く。情けねぇイライラで嘘ついて行かないとかダサいよなぁ俺。無意識のままジャケットを羽織って財布を手に家を出た。

駅前の焼き鳥屋。扉を引くと元気なおっちゃんの声が響く。入ってすぐのカウンターで顔を伏せてる女を見てびっくりした。Aだ。


ト「お前、何してんの...?」

『...なに、いまさら』


かなり飲んだのか呂律が危うい事になってる。


ト「...お前もしかして俺が断った日1人で呑んでたんか?」

『...わるい?』

ト「あーもー...何やってんだよ...」

『うっせぇよ...』

ト「もっと前日から言えばいいだろ?なんで急なんだよ。俺だって用事あんだからさ...」


文句をくどくどとぶつけると、初めて彼女は顔をあげて俺の服を掴んだ。呆れるほど弱い力。


『ともが!!...言ったくせに』

ト「ん?何を?」

『...なんもない』

ト「言えよ、ちゃんと」

『...ともが、わがまま言っていいって、言ったくせに』


記憶を辿って必死に思い出す。そう言えば初めてのサシ飲みの時、元カレにもっと甘えてやれば?と進言した俺に、甘えるなんて私がすんのは気持ち悪いでしょと彼女は言った。それに対して俺は、俺にわがまま言うリハビリするか?なんて冗談半分で言ったのだ。それを覚えてたなんて正直びっくりだ。


ト「...良く覚えてたなそんなん」

『どうせそれくらいの気持ちじゃん...』

ト「何卑屈になってんだよ」

『...もう帰る。』

ト「ちょ、来てやったのに...」

『もう!突然誘ったりしないから!!』


そう叫んだ彼女はレジに2万円を叩き付けて店を出て行った。彼女の目の端に光ったあれは幻だろうか。

*→←レンズ越しの俺:KA



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ぴあ(プロフ) - 海月さん» いつもありがとう海月 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - Lizさん» ありがとうございます!読み返して頂けるのは本当に作者としてありがたい限りです。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 時雨さん» 占ツクでもTwitterでもありがとうございます。 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - 珊瑚樹茄子さん» いつもいつも心温まるコメントを頂けて本当に糧になりました。ありがとうございます! (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - なぁさん» ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします! (2020年3月11日 8時) (レス) id: 84b390d948 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴあ | 作成日時:2019年5月29日 13時

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