アルストロメリア3 (ページ49)

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ぽろぽろとこぼれ落ちる涙を掬ってそのまま抱きしめると、安心したのか嬉しそうに胸元にすり寄るA。その仕草がかわいくて頭をゆっくり撫でた。指に通る髪はこれまでと違ってすぐに終わりを迎えるから、どことなく物足りなさを感じる。

「だいぶ切ったなぁ」

『にじゅっせんちって美容師さん言ってた』

「そんな切ったん？めちゃくちゃ勇気いったやろ？」

『んー、でもお仕事やもん。しゃあないよ。……ほんまは切りたくなかったけど』

「なんで切りたなかったん？」

『……わかってて言わせようとしてるやろ』

「ん？(笑)」

『笑ってごまかすんじゃありません』

頬を膨らませたAの髪を一定のリズムで撫で続けていると、指が首筋に当たったのかくすぐったそうに身を捩る姿がかわいくて。

「うん、短いのもええかもな」

『ほんま？』

「ていうかAやったらどんなんでもええわ」

『……坊主でも？』

「極端すぎん？(笑)」

『そこは自信持って愛してよ』

「なーんか聞いた事あるセリフやなあ(笑)」

『んへへ(笑)』

笑った顔がかわいくて、せやのになんか大人っぽく見えて綺麗で。相変わらず無自覚なAの手の平で上手いこと転がされてるような気がした。
それが悔しくて前よりもよく見えるようになった首筋にがぶりと噛み付くと、漏れ出るAの声に背筋に電流が走った感覚に陥る。

『、んっ、ちょっ、なんでっ、？』

「噛みやすくなったなあ思て」

『あかんて。明日もお仕事あんのに』

「痕付けてへんから大丈夫」

『っ、そういう問題じゃなくて、』

「こんな首見える髪型にして、噛んでくれ言うてるようなもんやろ」

『ちょっ、なんでそうなるっ？』

「もうちょっとだけ」

『せやくんのもうちょっと長いからいやや……』

「……ふーん？そんなこと言うんや？」

『あ？え？ちょ、！』

"いや"なんか言われたらそらスイッチ入るやろ。
暴れるAを抱き上げてベットへと運ぶと、パラッと落ちる髪の束は当たり前に少なくてやっぱりちょっと寂しい気もする。あの瞬間の散らばる長い束見るの結構好きやってんけどな。

「その気にさせたんAやねんから覚悟しいや」

『なんで？どこでそうなった？』

「無自覚ってほんまこわ」

短なって汗で首筋に張り付きやすくなった髪は、これまで以上に掻き立てるものがあって、これはこれでアリかもな、なんて思った。