141.笑顔の秘訣 ページ43
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慣れへんドラマの現場で緊張する俺を気にかけて、空き時間や撮影終わりによくご飯に連れてってくれる照史くん。もちろんそこには、俺も照史くんも大好きなあの人も誘って3人で行くのがここ最近の定番。
「A！大晴と飯行くけどAどうする？」
『え！待って！すぐ着替えてくる！』
「ゆっくりで大丈夫やから怪我せんようにな〜！」
休憩前、最後のカットを1人で撮っていたAちゃんは、小走り気味に自分の楽屋へと戻って行った。
そんなAちゃんの背中を見送りながら、近くにあったイスに2人で腰を下ろす。
「やっぱ照史くんてAちゃんに過保護ですよね」
「ん〜？まあかわいいかわいいうちの子やからなぁ。どうしても甘やかしてまうんよな。あ、淳太くんに怒られるからこれ内緒な」
にひひって効果音がぴったりな笑い方をする照史くんは、俺にとってもAちゃんにとってもほんまに優しくて頼れるいいお兄ちゃん。
Aちゃんの初恋っていうのも納得やなぁとちょっと不貞腐れてしまうぐらいには。
「Aちゃんいっつも元気ですごいすよね。Aちゃん見てるとまだまだ頑張らなあかんなって思います」
「んー、まあただ元気なだけじゃないと思うで、俺は」
「え？どういうことっすか？」
「なんやろなぁ？昔からそうなんやけど、たまに元気がから回ってる時があるんよ。無理やり元気にしてるって言うか、元気な自分を演じてるって言うか」
「ほんまです？僕には全然いつも通りに見えますけど、」
「あ、大晴がAのことちゃんと見れてないとかそんなんちゃうねん！ただあれはもはや癖みたいなもんやからなぁ。たぶんA自身も気づかんと無意識の内にやってるんやと思うで」
「……照史くんはなんでわかるんすか？」
「なんで、んー、難しいなぁ。ちっちゃい頃から見てきたから、としか言えんなぁ。空気感とか雰囲気とか、そんなレベルやから」
……それって、誠也くんやったらすぐ気づくんかな。
本人ですら気づかれへん些細な違いに気づいて、話聞いたり励ましたり癒しになったりとかするんやろうな。ほんまずるい先輩やな、あの人。いつまで経っても勝てる気がせえへん。
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作者名：てと | 作成日時：2023年1月29日 17時
